12

 その眼差しに、背筋がゾクッとした。


「俺の親、自分達が高学歴じゃねぇから、俺に大学行けってうっせぇんだよ。そんなに行きたけりゃ、てめぇが行けっつーの」


 乱暴な口調に、思わず身を強張らせる。


「ていうか、あんたよく見たら美人だな。スタイルも悪くねぇし、どうせするなら違う勉強教えてよ」


 彼はベッドから起き上がり、ニヤニヤ笑いながら私に近付いた。


「……違う勉強って?科目を変えるってことですか?まだ……可能ですけど。大学は理数系?文系?」


「じゃあ変更。保健の実技にしろ。保健の授業で性教育イマイチよくわかんなかったんだよな。ちゃんと実技指導してくんない?年上だし経験豊富なんだろう」


 彼は壁にドンッと両手をつき私を挟み込み、顔をヌーッと近付けた。


「……変なことしないで」


「変なこと?男と女、ソレッて難しい方程式や化学の実験より、大事な勉強じゃね?上手いか下手かで、人生変わっちまうだろ」


「……離れなさい」


「いきなり命令口調かよ。大学生のバイトのくせに、センコー面すんな」


 彼は私の腕を掴むと、いきなりベッドに押し倒した。ベッドのスプリングで体が跳ねる。


「やめて、大声で叫ぶわよ」


「叫びなよ。店は酔っ払いが騒いでっから、叫んでも聞こえねぇよ。あんた電車で俺を見てただろう。不良にやられてる俺を見て、それでもノコノコ付いて来たのは、俺に興味があったからじゃねぇの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る