第3話【初対面 初めまして パク・ソウ目線】
珍しく兄弟揃って呼び出された。
リビングで3人が揃ってから父の書斎に向かった。
父の韓国語を秘書室長のユンソン兄さんが英語に訳して話しているのが聞こえる。
ユンソン兄さんは父の会長秘書で秘書室長でもあるが、俺たちの事もよく知っている頼れる兄貴的存在の人だ。
実の兄弟ではないが、俺たちは‵兄さん′と呼んでいる。
「イェス、グランパ……」か細い声が聞こえた。
トントン・・・
「ああ、入りなさい。」
書斎には車いすに座った子がいた。
男…だよな。線の細いヤツだ。
頭から顔半分まで包帯で覆われている。
かなり痛々しい。
え?足が、片足が…ない……
痛みまで感じ取ってしまうジウン兄さんは一瞬にして目をそらしている。
引き取る事になったいきさつを一通り説明された。
おぼろげにも覚えている一番上の兄さんの死はショックだ。
兄さんの一人息子なんだそうだ。アメリカンスクールに通っていたこともあり簡単な英語と日本語が話せる。父親から韓国語は教わってはいないらしい。
韓国語が不慣れなので、しばらくは家庭教師をつけて韓国語を覚え、体調の回復を見ながら語学学校や大学に通わせるつもりらしい。
いつか、グループが吸収した形になっているアキラの父親の起こした会社を継がせるつもりなのだろう。
俺から見れば甥(おい)っ子になるが、この家で暮らすなら、きみ、末っ子 決定ね。かわいい弟ができた。
とうとう俺も「兄さん」だ!
「会長、会議のお時間ですので、そろそろ。」
退室する気配を読み、心細い目をユンソン兄さんに向けた。
捨てられた子犬かよ。
『お手伝いのおばさんに部屋まで案内してくれるように言っておくからね。ちゃんと頼んでおくから。それまで兄さん達と話しておいで。』
「…(コクン)」
〈兄さん達〉……いい響きだ♪
父が退出すると アキラに歩み寄り名前を言って「よろしく。」とソジュン兄さんが握手の手を差し伸べた。
ジウン兄さんはそっけなく名乗って腕組みをしたままそっぽを向いている。
かなりアキラが味わった苦痛を痛みを伴って追体験し始めてしまっているようだ。
とても握手なんてできそうもない。
顔がこわばってきているのが分かる。理解してあげたいという気持ちがあるから遮断するわけにもいかず。
⦅誤解されるぞ⦆と、目くばせしたが、⦅これで精いっぱいだ⦆との事。
ほら見ろ、ジウン兄さんを見てアキラが怯えてる。
「パク・ソウだよ。ソウ兄さんだよ。」
ファン達に好評のキラキラスマイルで手を差し出した。
ホッとした表情で握手に答えてくれた。
「じゃ、俺、仕事があるから……」
「ああ、俺も。パク・ソウ、かわいい俺たちの末っ子の事、あとよろしくな。アキラ、またな。」
「え?俺もダンスレッスン抜け出して来たんだって。」
バタバタと部屋を出ようとした俺の腕をアキラが必死で掴んだ。
「は?なになに?」
アキラは翻訳アプリになにか必死に打ち込んでいる。
俺には何を聞きたいのか、すぐ分かったが、その様子が面白くて、(いや、どちらかと言うと、かわいいかな……)最後まで見届けた。
「화장실 어디예요?」
(ファジャンシル オディエヨ)
『トイレどこですか?』
駐車場に向かうソジュンとジウン。
「兄さん、どう思う。」
「うーん、抜き出た能力があるようには思えないんだが、事故の時、どうやって車の外に出たのか、そこだけうまく見えないんだ。」
「事故車両でも見れば俺にも感じられそうだけど、それは無理だし。
あいつからは、とにかく痛みが大きすぎて、俺、悲鳴あげそうだったよ(苦笑)」
「まだ、目覚めてないだけかもしれないし……
近々、お前の店に寄るよ。また、その時に。いい
「ああ、目をつけてる上等の生チョコレート、仕入れとくよ。ソウにも言っておいてくれよ。」
お互い、「じゃぁ。」と言って、愛車に乗って去っていった。
アキラがこちらの生活にも随分慣れ、語学学校に通うようになった頃、あの事件が起きた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます