第2話【俺たち兄弟の事】【会長 父】

【俺たち兄弟の事】


俺たちの家族は比較的(結構かな?)裕福だ。

あるご先祖様が自分の中に、この力がある事に気づいたんだ。

そこから一族が栄えることになったわけで。

感謝しているような。していないような。

余計な物を見つけてくれたような。

いやいや、ご先祖様あっての俺たち。ありがたいことです。


俺たちは幼いころからこの力の存在を知っていた。

三人そろってゲームなんかやっても、勝負になんかならなかった。

「じゃんけん」については相手が何を出すか分かるのに、いったい何をやっているのか理解に苦しんだ。

当たり付きのお菓子なんて、こんなにわかりやすいものをどうして外すのか不思議だった。


物心ついたとき、しっかりと教えられた。

普通ではない力には人々の好奇心と恐怖にも似た感情が向けられる。

知られてはならない。それが自分の身を守る事にもなると言う事も理解できた。

先祖代々からの教訓ともいえるだろうか。

そう、だれもができる事ではない、という事をはっきりと知った。


今は亡き祖父は言った。

私たちはこの力に気付いただけなのだ。誰にでもあって、ただ、眠っているだけなのだろう。この力が神からの贈り物だとするならば、一族の富はまだ気づきの訪れていない人々と分かちあうべきだ、と。

俺たちも、そうだと思った。不思議な能力だとは思ってはいないから。


ただ、一族の誰にでも出るというわけではなく、また、あったとしても力の強さにバラツキはあった。

父のように、なんとなく、という者もいれば、かなり強い能力を発揮できる者もいたそうだ。

視力、聴力、感性、認識力……その力の種類もさまざなだった。

これらの能力は高低の差こそあれ、1人の人間にすべて備わっているようだ。

そのうちのどれか1つの能力が相対的に高くなっている。


例えば俺たち3人の兄弟でも、それぞれ違うタイプだ。


俺たちは普通の人間からしたら、それらの能力が特出した「超」が付く、いわゆる超能力者(サイキック)だ。


この能力、四六時中、それも24時間、開けっぱなしでいるとかなり疲れるため、ここぞというとき以外はレベルを落としたり遮断する技も身につけた。



脳の栄養はブドウ糖だ。男ではあるが、皆甘いものが大好きだ‼

これは兄弟で一致している。

さすがに、いい大人の男が外でウキウキしながらパフェだのケーキだのを頼めないのが辛い所だが、その点、ジウン兄さんがいろいろ店に取り寄せてくれるので、非常にうれしい(お客さんに出す分まで食べてしまって怒られたこともあったが……)。

最近話題になるようなスウィーツ系の情報はそこいらの女性に負けないだろう。


それからもうひとつ、俺たち3人兄弟の上に、年は離れているけれども、もう一人、兄がいる。父の先妻の子。つまり、俺たちは後妻の子達。

先妻の女性は難病にかかり、八方手を尽くしたにも関わらず、亡くなったそうだ。

美しくて、優しい心を持った方だったそうだ。俺たちの母も知っている方だそうで、命日には父と一緒に寺に出かけている。


一番上の兄さんになる彼は今韓国にいない。

俺が小学校に入った年だったと思う。

兄さんが荷物を持って家から出ていくのを見たんだ。今ほどの力もなかったし、大人な感情もなかったから、別に詮索する事もしなかった。

だけど、その後、兄さんは帰ってこなかった。

日本で結婚し、家族3人で幸せに暮らしているそうだ。


【会長 父】


私は代々続く財閥企業の会長をしている。

系列企業からの余った利益(利益剰余金りえきじょうよきん)から、先祖からの遺言通り各種支援、援助団体に多額の寄付をしている。


私の元には今3人の息子がいる。

息子たちは私よりも力が強いらしく、それぞれ能力を生かして独立している。

まだ、今いる一番上の子も私の跡を継ぐ気はないようだ。


先ほど息子が3人と言ったが、実は20年ほど前に家を出た先妻の子がいる。


自分には力が無く、後妻の子達にはその能力がはっきりと表れていた事に引け目を感じていたのは知っていた。


どの子も私は愛していた。だが、その能力についてはどうしてあげることも出来なかった。

「お前はお前のままでいい。私の跡を継いでほしい。」

そう、伝えた。

しかし、あの子は出て行ってしまった。


この国を離れ、日本で結婚し、幸せに暮らしているという情報は入っていた。

結婚した女性は身寄りのない人だったらしいが、先妻にどことなく似ている。

男の子が生まれたことも知っている。


いつでも頼って、できれば帰ってきて欲しかった。

平凡な自分がそのままで幸せになりたいと願っていたが、少なからず先祖からの力があったのだろう。

身一つから始めた事業で、ある程度の財を築き上げていたようだ。


そんな息子から家を出て以来、初めて便りが届いた。

一度会いたいと。息子にも会わせたいと。


私には初孫だ。私よりも若い年齢で結婚したから、私も若くして「おじいちゃん」になったものだ。

仕事を依頼した者が盗撮した孫の写真が届くのは楽しみだった。

どちらかといえば母親似だろう。


「会長!大変です!! 日本にいらっしゃる息子さんが交通事故で…」


耳を疑った。もうじき会えるはずだったじゃないか。

やっと、やっと話が出来る、そう思っていたのに。


一人息子が生き残った事を知った私は、すぐに引き取る意思を表明し、手続きをした。

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