第3話 とある週末のボヤキ
休日と言うのは休む日と書く。ダラダラして過ごして何が悪いというのだろう。
何もしなかったような一日に罪悪感がある私。いったい誰に対して、何に対して抱く罪悪感なのだろうと不思議に思う。
一日中、ダラダラ過ごして夕方になる、そんな日もあるさ。
声に出してそう言ってみても空しいだけ。仕方ないので、台所仕事でもやろうか、と冷蔵庫を開けてみた。
昨日の鍋の残りの豚肉と、ジャガイモとしめじ、人参もあるしこんにゃくもある。これは肉じゃがだな、しめしめ。圧力鍋でチャチャっと出来るぞ。
ジャガイモと人参の皮をむいて一口大に切り、しめじは石づきをカットして房を分けていく。あっちを向いたりこっちを向いたり、小さなしめじ傘が可愛く並ぶ。
板こんにゃくはスプーンでちぎると、包丁で切るよりも、表面にザラツキが出来て味が良くしみるらしい。お弁当用に炒め煮にするために買ったのだけれど、面倒になって冷蔵庫でストックになっていた板こんにゃく。今宵は君の出番だぞ。
私は肉じゃがを作るときにはいつもは糸こんにゃくを使う。
卒業してひとり暮らしををするようになって雑誌で料理を覚え、結婚してからは義母を真似て。居酒屋やスーパーのお惣菜で知った工夫を加えて今に至っている。
どこかで糸こんにゃく入りの肉じゃがを食べて美味しいと感動して以来、ずっと我が家は糸こんにゃく入りの肉じゃが。実家のそれとは全然違う。干しシイタケを入れずにしめじを入れるのはコストの軽減のため。干しシイタケは高いけどしめじは安い、これぞ台所事情。
下ごしらえをした野菜や肉がきれいに並び、さながら料理番組のようである。BGMのラジオからは冬うたJ-POPが流れる。
満を持して、圧力鍋を据えたコンロの火をつける。私はガスコンロに火が付くカチカチっという音が好きだ。最初に豚肉を投入。段々と豚肉の油が解けてくる。赤い肉が焼けて美味しい色に変わるのを眺めるのは楽しい。空腹のときにはこの時点で肉をちょっとだけ小皿に取り出し、塩コショウをして食べる。私の密かな楽しみである。悪癖と言うべきかまぁ、それはさておき。。
肉に火が通ったら、玉ねぎを投入して軽く混ぜながら炒める。玉ねぎの色が変わってきたら、人参、しめじ、こんにゃくを投入して混ぜながら軽く炒め、あらかじめ用意していた調味液を流し入れる。
熱した鍋に液体を入れるときの、ジュワーっという音はいい。美味しいモノを作っているような気にさせてくれるいい音だ。
ふたを閉めて圧力鍋をセット。しばらくするとシューっと蒸気が上がり、所定の時間を過ぎたら圧力を抜いて出来上がり。
こうして心を込めて作った肉じゃがの味が薄いという夫。糖尿病患者にはちょうどいい味加減という訳だ、お褒め頂きありがとう。
「明日にはちょうどいいかもね」と言うので「そうねぇ」とトボケた返事をしながらテレビに目をやる。ちっちゃなことで腹を立てていたら夫婦なんてやってられない。
圧力鍋よ、今夜もありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます