出来る限りの無理を
一時間後。
舞が無言のまま、リビングのドアを開けて中に入ってきた。
突然の出来事で二人が固まっていると、
「ただいま。終わったよ」
いつもの調子で舞が言った。
「あ、あのさ、ただいまじゃないでしょ! どうしたの、こんなに遅くなって……?」
椋が立ち上がって言った。
「やー、ごめんごめん。んー、ニュースでやってるかわかんないし、心咲辛いだろうからあんまり言わないけどさ、ネズミビースト、大増殖しててさ……」
「ええっ……?」
「ちょっ、大丈夫なのそれ?」
「だ、大丈夫大丈夫。一体一体は弱かったからさ。あはははは」
舞は飄々とした態度で笑った。
「ま、そういう事だよ。……ちょっと、気分的な問題でシャワー浴びてくるね」
舞はそう言うと、リビングから出ていこうとして、
「あ、あのさ、舞ちゃん!」
心咲に呼び止められた。舞が振り向くと、心咲は心配そうな表情を向けていた。
「あ、あのさ……無茶してない!? 私達心配なんだよ、舞ちゃんが、何か……凄く辛そうな時があるから……」
舞は逡巡してから、
「大丈夫、無茶はしてないよ。絶対に」
はっきりと答えた。
「…………本当に?」
「本当本当。大丈夫」
舞はそう言うと、その返事を聞かずにリビングから出ていった。
「無茶はしてないよ……。自分に出来る限りの無理はしてるけどさ」
階段を登りながら、舞がそっと呟いた。
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