不穏
夕方。
「ごめんねー、送ってもらっちゃって……」
心咲は、少しだけ申し訳なさそうに言った。
「いやいや、大丈夫だよ。ここ最近、ビーストが活性化してる気がするからさ」
舞は、自分が体感した事を元に言った。
「まあ、何か不審者の情報もあるし、ねえ。舞ちゃんいれば大丈夫だろうけど」
「あのね椋、私だって無敵じゃないんだからね? 見敵必殺、ってだけで」
「十分強いじゃないの」
そんな事を言って歩いていた時だった。
「っ! 危ないっ!」
「きゃっ!?」「わっ!?」
突然、舞が二人を突き飛ばしながら地面に倒れた。
「ちょっと、急にどうし――」
椋が何か言おうとしたが、
ガシャアンッ!
「た、の……?」
数秒前にいた場所に、窓ガラスが降ってきて、砕けて飛び散った。椋は、言葉を失った。
舞は素早く立ち上がると、胸元から『エボルペンダント』を取り出して周囲の警戒を始めた。
「あ、あっぶなあ……」
「椋、危ない所じゃない。これ、私達を狙ってどっからか投げられた物だよ」
「えっ……!?」
「周りの窓を見てみたけど、どこも外れてるような場所はなかった。誰がどっから投げたのはわからないけど、これは急いで家に帰った方がよさそうだよ。二人共、立てる? 怪我はない?」
「う、うん」「大丈夫」
心咲と椋が立ち上がろうとした、その時だった。
「ん、何よこんな時に……?」
椋のスマートフォンが震動した。電話の時の物だった。
椋がスマートフォンを取り出して、画面を見て、絶句した。
「ま、舞ちゃん、これ……」
椋の表情は、青ざめていた。
「どうしたの?」
舞の問いに、椋はスマートフォンの画面を見せる事で答えた。
スマートフォンには、
『こ れ 以 上 戦 う の な ら お 前 の 周 り の 人 間 が 不 孝 に な る ぞ』
という、大きさがバラバラな文字がノイズと共に浮かび上がっていた。五秒程表示されて、突然消えた。
「あ、あれ? 電源落ちたの?」
椋が慌てて何度か電源ボタンを押して、それでも反応がなかったので、電源ボタンを押し込んだ。少ししてから、電源が入った。
「…………」「…………」「…………」
三人は、顔を見合わせる事しか出来なかった。
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