心と体を変える

『こちらミリヤ。……悪いニュースよ。遊園地の体育館の方にもビーストが出現したみたい。どうやらこいつら、群で行動していて、あっちは別動隊みたいな物らしいわ』


 『魔法機構日本支部』の司令官の一人であるミリヤから、部隊全員のヘルメットに付随されたインカムに通信が届いた。


「くっそ、こいつら……!」


 部隊の隊長であるエドが悪態をついた。

 エドを含めたスローレイダー五名は、仮称兵隊アリビースト率いる五体のアリビーストと戦っていたが、


「統率がとれ過ぎている……!」


 地面に伏した、西条さいじょうが呻くように言った。


 兵隊アリビーストが勝ち誇るかのように大顎をガチガチと鳴らし、右手を振り上げた、その時だった。


 黒髪をポニーテールにした少女――ミチルが、スローレイダー隊員達と兵隊アリビースト部隊の間に割って入った。


「なっ、き、君は!?」


 エドは、ミチルの右手首に装着された『エボルブレスレット』を見て驚愕した。



「……へえ」


 『魔法機構日本支部』の指令室から他の隊員と共に状況をモニターしていたミリヤは、ミチルの姿を見て、興味深そうに声を漏らした。



「なっ……何をしているんだ!? 早く逃げろ!!」


 エドは、必死になってミチルに言った。


「……いいえ、逃げません。私は、戦うためにここに来たんです!」


 ミチルは、キッパリと言い放った。


「……確かに私が戦う必要はないかもしれない。確かにそうだよ。だから……戦う理由は後で探す!」


 ミチルは、兵隊アリビーストを睨んで言った。


『Okay mymaster、start your engine !』


 『エボルブレスレット』から音声が流れた。


「チェンジ、マイ、ソ――――ウル!!」


 ミチルは右腕を突き出して、『エボルブレスレット』に嵌め込まれた蒼い宝石に左手で触れて叫んだ。

 ミチルの体を蒼白いオーラが包み込み、それと同時に軽い衝撃波が発生した。


『Change Your Body !』


 『エボルブレスレット』が音声を発し、それと同時にオーラが消失した。オーラの中から現れたミチルは、蒼白を基調とした姿に変わっていた。


「『ディバイドロッド』!」


 ミチルが右腕を広げると、右手の中に白銀の杖――『ディバイドロッド』が納められた。


 それと同時に、兵隊アリビーストが再度右手を振った。五体のアリビーストが動き出す。


「うおおおっ!!」


 その時、五体のアリビーストに、スローレイダー隊員が掴みかかった。


「残りの一体を頼むっ!!」


 エドが叫ぶように言って、アリビーストを投げ飛ばした。


「……!」


 ミチルは一瞬驚いたが、


「わ、わかりました!」


 そう言って、兵隊アリビーストに向かって走り出した。


 兵隊アリビーストは大顎を鳴らすと、右腕を振り下ろした。

 ミチルはそれを『ディバイドロッド』で受け止めて、右足で兵隊アリビーストの腹を蹴り飛ばして吹っ飛ばした。


「えっと、魔法少女って言われたけど、これどうやって魔法使うんだろう……?」 

『Noproblem my master.your imagination,equal your magic.』


 ミチルの言葉に、『エボルブレスレット』が英語で答えた。


「え……。い、イメージすればいいの?」

『Yes you can.』

「……わかった、やってみるよ!」


 ミチルはそう言って、杖を両手で握り締めた。


「……これなら、どうかな……」


 暫くそうして、ミチルは『エボルブレスレット』を見た。


『Okay、your imagination so cool and good.』


 『エボルブレスレット』が、肯定の意を示した。


「じゃあ……やろうか!」

『Yeah !』

「『ディバイドランチャー』!」

『Divide launcher、active !』


 ミチルの詠唱と共に『エボルブレスレット』から音声が流れ、ミチルの目の前に逆三角形に並んだ蒼白い魔方陣が現れ、魔方陣から一斉に光弾の連射が始まった。


 光弾は兵隊アリビーストに命中し、兵隊アリビーストをのけ反らせ、後ずさらせた。


「今なら……! 『ストライク……パニッシャー』!!」


 ミチルは、『ディバイドロッド』を兵隊アリビーストに突きつけた。


『Strike punisher !!』


 『ディバイドロッド』の先端に蒼白い魔方陣が出現し、そこから極太の蒼白い光線が放たれた。


 兵隊アリビーストは光線に包み込まれ、消滅した。


 それとほぼ同時に、スローレイダー隊員が紺色の大型拳銃でアリビーストを射殺した。アリビーストは、溶けて黒いゲル状の物体になった。

 


 ミチルは、スローレイダー隊員と共に『魔法機構日本支部』に戻り、指令室に向かった。


「……それで、どうするのかしら?」

 

 ミリヤは、ミチルに聞いた。

 

「……私、決めました。私は、『エボルブレスレット』と一緒に、ビーストと戦います!」


 ミチルは、ミリヤを真っ直ぐ見据えて言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る