第三話 魔法少女

落とし物

「えー、明日から夏休みに入る。遊んでばかりいないで、ちゃんと勉強するように。それから、最近、市内で殺人事件が多発しているから、特に夜は、無闇に外出しないように。わかったな? 質問は? ……よし、ないようだからこれで終わりにするぞ。号令頼む」


 クラスの担任が連絡を伝え、


「起立。……さようなら」


 クラス委員の少女の挨拶と共に、クラスの全員が頭を下げながら、さようなら、と言った。直後、帰宅の準備が始まった。


「うーん、やっと終わったー……!」


 黒髪をポニーテールに纏めた明るい茶色の瞳の少女は、伸びをしながら言った。


「ミチル、今日どこ行く?」


 ポニーテールの少女――ミチルの前の席のややボサボサの黒髪の少年と、


「弘輝、あれだよ、『アニバーサリー』にアイス食べに行こうよ、ミっちゃんも一緒に」


 ショートカットの黒髪の少女が話しかけてきた。


「お、そうだな。じゃあそうすっか。ミチルはどうする?」


 ショートカットの少女に弘輝と呼ばれた少年は、ミチルを見て聞いた。


「いいけど……、弘輝も晴夏も、早速遊ぶ気なのね」


 ミチルは笑いながら言った。


「まあねー。それと、今日ね、アイスが三割引きなんだ」


 ミチルに晴夏と呼ばれた少女はそう言うと、歯を見せて笑った。


「あ、そういえばそうだったね。じゃあ、一回家に帰って、着替えてから図書館に集合とかでいい?」

「いいよ」「オッケ」


 弘輝と晴夏は、ミチルの提案を了承した。



 帰り道。


「さて、何着ていこうかなー?」


 そんな事を呟きながら、ミチルは楽しそうに歩いていた。


「…………ん?」


 そんな中、ミチルは道端に落ちていた何かを見つけた。


「何これ、ブレスレット?」


 それはシルバーのブレスレットで、大きな蒼い宝石が一つだけ嵌め込まれていた。


「綺麗だな……落とした人が見つけられるといいけど」


 ミチルはそう呟くと、すぐ側のバス停の土台に置いて、家路を急いだ。



 ミチルがその場から離れた後。


『ユーザー認証……確認しました。ユーザー、三橋ミチル。細胞浸食度、45%。適正ランク:B+。初期設定完了まで、あと、一時間三十分』


 ブレスレットから、女性のような電子音が流れた。

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