落とし主
「あっれー……この辺なんだけどなあ……」
ジュラルミンケース片手に歩く金髪碧眼の十代中頃の少年は、昨日、怪物に襲撃された際に落としてしまった『ある物』を探していた。
「別に怒られるのは構わないし、減俸もいいんだけどさあ……、あの量の始末書だけは勘弁だし……」
少年は、ブツブツと言いながら下を見ながら道をくまなく見て回っていた。
「しっかし、よく生き残ったよなあ。……魔法様々だよなあ、ホント」
少年がそう言った時だった。
「お! そうそう、あれだよあれ!」
探し物が見つかった。バス停の土台に置かれていた。
少年が探していたのは、蒼い宝石が嵌め込まれた、銀色のブレスレットだった。少年がこの辺りに来る三十分前に、ミチルがバス停の土台に置いておいた物だった。
少年はブレスレットを拾い上げると、安心した表情になった。
「いやあ、よかったあ……。これがよからぬ事考えてる奴の手なんかに渡ったらって考えたら、ゾッとしないもんなあ。一応安全装置設けてあるらしいけど」
少年はそう言いながらしゃがみ、ジュラルミンケースを開いた。その中にブレスレットを入れようとした、その時だった。
『ユーザーに危険が迫っている事を感知しました。ユーザーの元に急行、します』
突然ブレスレットから機械音声染みた女性の声が流れると、少年の手の中から浮かび上がって、どこかへ飛んで行った。
「…………」
少年は一瞬固まったが、
「えええええ!? ちょ、ま、嘘!? ていうか、ユーザーって!? と、兎に角追いかけないと!!」
すぐにジュラルミンケースを閉じて立ち上がって、ブレスレットが飛んで行った方向へ走り出そうとして、
ピピピピピ。ピピピピピ。
スマートフォンに支給されたテレビ電話アプリに通信が入った。
「この忙しい時に!」
少年は悪態をつきながらスマートフォンを取り出して、アプリを起動して、
「はい何ですか? 悪いですけど、こっちは今忙しいんです! あのブレスレット、自分でどっかに飛んでっちゃうし、何かユーザーとか言ってたんですよ!?」
一気に捲し立てたが、
『エボルブレスレットの方も大事だけど、こっちも大事なの』
通信してきた腰まで届く流れるような藍色の髪と深海のような紺色の瞳を持つ二十代後半の女性、冷静に返した。
「何ですか、司令? 正直こっちかなりヤバいと思うんですけど?」
『ビーストが出たって言えば落ち着くかしら?』
女性の言葉で、少年は一瞬で表情を変えた。
「どこですか?」
『『アニバーサリー
「わかりました。すぐに向かいます!」
『じゃあ切るわね』
女性はそう言うとすぐに通信を切断した。
「急がないと!」
少年はスマートフォンをしまいながらそう言うと、『アニバーサリー市ヶ目』に向かって走り出した。
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