戦いの終わり

何度も繰り返される紛争。

クラスメイトだったり、家族だったり、得体の知れない何かだったり。

それらを爆破しては肉片とし、時には逃げている。


この時は、ゾンビだった。

明かりもない暗闇で右往左往している奴らを、機関銃で吹き飛ばし、蹴り飛ばし。

襲い来るものは掻い潜り、私は列車へと走っていた。

当然、車内が安全というわけではない。乗りこんでみると辛うじて明かりはついてるものの、状況は外と変わらない。

容赦なく機関銃を撃ちまくり、個室がある隣の車両へと移動する。

丁度一ヶ所空いている個室があり、隙を見て中に入り鍵をかけた。

一先ず安心…ではなかった。


ドンドンドンドンッ!


ドアを叩く音がけたたましく響く。

ゾンビが雪崩れ込んで来たらおしまいだ…そう考えると、私は反対側の窓に手をかけた。

開け放たれた窓から身を乗り出し、屋根に向かいよじ登った。

上まで登り終えると、人影が現れる。

私と同じように機関銃を手にした大男だった。

「お前も生きていたのか!」

大男が叫ぶ。どうやら私の仲間のようだ。

そして一人二人と仲間が現れ、五,六人の生存者と合流した。

私は彼らに落ち合うために必死に走ってきたのだ。

「おい、見てみろよ!」

仲間の一人が叫ぶ。

何やら指をさしていたので、その先に目を向けると…空が白んでいた。

「夜が…夜が明けるぞ!」

「俺たちは生き残った!俺たちの勝利だ!!」

口々にそう叫ぶと喜びを分かち合うように互いを抱き合っていた。


勝利の基準もわからない、ゾンビたちがどうなったかもわからない。

ただ喜び勇む彼らの姿と、昇る朝日の美しさはさながら映画のラストのようで、そうか…勝ったのかと思わずにはいられなかった。


グッドエンドを見届け目を覚ました。

この夢以降、何かに追われることも、得体のしれない恐怖を感じる夢も見ることは無い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る