第十四幕『人魚の力』

「あの嬢ちゃん、来ると思うか?」

「お前が彼女との約束を信じたから、此処までわざわざ来たんだろう?僕はお前のその判断を信じるよ」

「……そっか。なら、俺もあの嬢ちゃんを信じ続けるとするよ」

「所でラース。あの島に港は?この船を持ち込んで売っても良いんじゃないか?」

「そう言う変な貧乏根性は止めろよ。船の特徴で色々足がつく」

「……そうだな、すまない。ところで、この商船の船長は?」

「ああ、お前はずっとコッチだったからな……凄いぜ」


 ヴィカーリオ海賊団では、此処しばらく猛毒を持った特殊な虎鯨と言う名の鯨を何とか調理出来ないかと、料理長ジョンと船医マルトがその調理法、また万が一の解毒法を模索している。厄介な食材だが、食糧事情を左右する重要な魚でもある。定期的に捕虜を捕まえ、その料理の人体実験を行っている。商船船長も例に漏れず虎鯨の食事を口にし、その特徴でもある中毒症状を起こした。しかし、パメラの寄越した鱗をほんの少量使った解毒薬が効果覿面。商船船長は今も存命していた。


「人魚の血肉ってのは霊薬の材料になるってのは本当みたいだ。マルトがもっとあの鱗を剥いで置けば良かったって嘆いてたぜ」

「定期的に人魚狩りをしたいとか言い出されたら、厄介じゃないか?」

「なら彼女が本当に人魚のお姫さんであると信じようじゃねぇの。人魚の王族に貸しがあるとなりゃ、鱗くらいたんまりくれそうなもんじゃねぇか」


 確かにその通りだ、と僕は屈託無く笑う少女の顔を思い出して苦笑した。

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