第十三幕『開放』
そうして二隻で航海をしておよそ二週間。乾物の肉が尽き、米も乏しくなり始め(勿論金曜のカレーもこの二週中止だった)、魚介メインの食事の回数が多くなって来た頃、目的だった海域へと船は到達した。
「で、このお嬢さんはどうやって海に運ぶんだ?」
『抱き上げてってくれても良いわよ船長!私こう見えて素上がり得意なのよ!』
素潜りの反対が素上がりか?息は五分は止めていられるから、と息を巻いて目を輝かせているパメラを他所に、船大工のルイーサがこんな事もあろうかと!と通常の倍ほどもありそうな巨大な樽を用意して来た。その樽ならば海水とパメラを入れて移動させるくらいなら出来そうだった。問題は、その大きさでは海水とパメラを入れて運び出せるか、と言う点だが。
「どうせこの船はこの辺りの海域に沈めちまうんだ。重くなった分は天井を破って、マストから滑車で持ち上げれば良い」
なるほど正論だ。
『どうして!乙女心を分かってくれないの!』
そりゃあ僕らは海賊だからな。効率が一番重視されると言う物だ。
島の近くまで移動し、岩場に近い沖合いに投錨する。
『じゃあ、絶対に此処で一晩待っててね。明日の夜にはお父様を連れてお礼の品を持ってくるから!』
マストに付けられた滑車で海水とパメラの入った大樽を吊り上げ、それをそのまま船外へとゆっくり下ろす。樽が海面に付くと彼女はその美しい肢体を翻して海の中に消えて行った。
「さて、ようやく通訳の仕事に一区切りだ」
とは言え、僕の仕事はまだ残っている。クラーガ隊を引き連れ、商船に残された巨大な水槽の解体を開始した。
巨大な削り水晶の板を程ほどの大きさに切り分けたり、四隅に施されていた金や宝石の装飾を丁寧に解体する。同時に船大工たちが商船のマストから帆を外して予備帆としてエリザベートへ積み込んだり、使えそうな部位の解体をしていた。どの道、エリザベートに積めない分は木っ端微塵に爆破して海の藻屑にしてやるんだ。
「よう、メーヴォ。皿の回収は順調か?」
「皿?」
「あ、いや、コッチの話。水槽の解体順調そうだな」
ぼちぼちだよ、と返して、切り崩した水晶板を、どの船室の船窓に嵌め込むべきか考えていた。まずは船長室かな?この水晶は硝子より強度があり、尚且つ軽い高級品だ。あの商人の取引先は相当な富豪だったに違いない。
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