FF15――受け継がれしFFのスピリット

AIがRPGに物語をもたらしました

むろん、テーブルトークRPGの時代からRPGにシナリオはあります

しかし、全てのユーザーがシナリオを愉しむために、RPGを遊ぶわけではありません

オンラインRPGでは、キャラクターの育成を最優先にする、ハックアンドスラッシュというスタイルが主流になってきています


RPGは古くはテーブルトークRPG、今ではオンラインRPGと、人同士が遊ぶゲームです

人は競争が好きな生き物ですから、元々ハックアンドスラッシュに向いていたのかもしれません

ですが、ゲームがコンピュターで動くようになる課程で、人は新しい遊び相手を見つけます

プログラムで表現されたキャラクターです


プログラムで表現されたキャラクターは、あたかも感情があるかように振る舞い、やがてマンガやアニメと同様に、RPGは物語としての地位を確立させていきました

しかし、ゲームが3Dで作られるようになると、物語の担い手はアクションアドベンチャーに取って代わられてしまいます


ゲームが2Dで作られた時代、RPGの世界はデフォルメでした

細部を省略することで、プレイヤーの視点が広がり、多くのキャラクターにスポットライトを当てることができたのです

しかし、3Dの時代になると細部を作り込まなければならず、プレイヤーの視点は狭くなり、活躍するキャラクターの数は減っていきました


狭い視点とわずかなキャラクターという3Dの制約は、RPG<坂口博信>にとってジレンマでしたが、アクションアドベンチャー<小島秀夫>には制約になりませんでした

アクションアドベンチャーは、ジレンマを最初から乗り越えていたからです


3Dによってアクションアドベンチャーが躍進、オープンワールドとシューターが台頭、FF15はアクションアドベンチャーとなる

いつしかユーザーは、RPGではなくアクションアドベンチャーのシナリオを愉しむようになり、RPGはハックアンドスラッシュを愉しむゲームになっていきました

RPGに課せられたミッションは、アクションアドベンチャーから物語を取り返すことです


アクションアドベンチャーとRPGには顕著な違いがあります

アクションアドベンチャーがキャラクターを直感的に操作することに対し、RPGはキャラクターに命令<コマンド>を与えることです


アクションアドベンチャーにおける操作キャラクターは1体であり、2体以上のキャラクターを同時に操作することに力点をおきません

2体以上のキャラクターを操作する場合、視点が切り替わります


これに対しRPGは命令なので、2体以上のキャラクターを視点の切り替えなしに、同時に操作することができます

ここでキャラクターを制御するAIが重要となる

キャラクターはシナリオの登場人物でもあるので、プレイヤーの命令はシステムだけでなくシナリオにも影響を与えます


命令を与えることでキャラクターを操作するRPGは、為政者や仲間を表現するのに向いているかもしれません

為政者は人の上に立つ者の務めや正義とはなにかを、仲間は承認と喪失を雄弁に語ります

RPGのシナリオには、そういったコンテクストが多く含まれているのです


田畑端が3Dでやろうとしていることは、まさに坂口博信が2Dでやったことの延長線上にある

FFは、3DCGやオンラインなど、常に最先端テクノロジーに挑戦してきました

AIがRPGに物語をもたらしたように、テクノロジーは新しい物語を生み出します

AIの精度を上げることが、環境シミュレーションRPGに繋がっているのです

そのことを忘れなければ、FFは――FFのスピリットはいつの日か必ず蘇るでしょう

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