RPGは一人遊びか? デジタル運動会か?

バージョンアップごとに、ボスとボスを効率よく倒すため必要なアイテムやスキルが追加され、最新のシナリオを愉しむため、誰もが否が応でもデジタル運動会に参加させられる構造には問題があります

「なにを言っているんだ? デジタル運動会こそマルチプレイヤーの本質だろう」という反論はあり得るでしょう

そういったスタイルを否定しているのではありません

シナリオ体験RPGを、完全にスポイルしてしまっていることが問題なのです


元々、別々のコンテンツとして楽しむことができるシナリオとハックアンドスラッシュが、運営型ゲームにおいては、必ず一体化したコンテンツとして配信されます

ですが、前作を遊んでいなくても新作のシナリオを遊べるポケットモンスターのように、ハックアンドスラッシュやPvPは、シナリオクリア後に腕に覚えのあるユーザーが、更なる高みを目指して挑むコンテンツという位置づけであれば、運営型ゲームであっても、ポケットモンスターのようなシナリオ体験RPGとマルチプレイヤーRPG両方の特徴を持ったRPGが作れるはずです


運営型ゲームは、アクティブユーザーを増やさないといけないので、シナリオとハックアンドスラッシュが一体化しているという事情は理解できます

しかし、運営型ゲームは、マルチプレイヤーRPGを遊ぶユーザーのことは考えていても、シナリオ体験RPGを遊ぶユーザーのことは抜け落ちています

シナリオ体験RPGをオンラインにするなら、別のモデルを考えなければなりません


バトルコンテンツそのものをなくせと言っているのではありません

ハックアンドスラッシュと無関係なシナリオの配信は、短編映画を定期的に公開するようなものなので、面白くなければ観てもらえないでしょう

強力なアイテムが入手できるバトルコンテンツを配信した方が、楽に儲けることができるかもしれません

ですが、かつて少年少女を夢中にさせたRPGは、ハックアンドスラッシュだけだったのかということを、開発者もユーザーも問い直してもらいたいのです


二次創作がSNSで拡散することが人気を測るバロメーターになっている、昨今のアニメのように、ゲームもデジタル運動会のアクティブユーザーが人気を測るバロメーターになっています

そこには、人とコンピューターによる一人遊びが介在する余地はありません


スポーツとテーブルゲームの時代

人の遊び相手は人だった


PCと専用機の時代

人はコンピューターという、仮想の遊び相手を手に入れた


インターネットの時代

世界中の人々が過剰に繋がり、人の遊び相手は人に戻った


物理演算とAIの時代

コンピューターが再び人の遊び相手になる


DQとFFは、コンピューター相手のゲーム=シナリオ体験RPGを一番上手く作ることで、第1次RPG黄金時代を築きました

次いで、ポケットモンスターとモンスターハンターが、人が相手のゲーム=マルチプレイヤーRPGを一番上手く作り、その極致が昨今の運営型ゲーム

そして、物理演算とAIの枠組みの中で、コンピューター相手のゲーム=環境シミュレーションRPGを一番上手く作った"なにか"によって、第2次RPG黄金時代が築かれるのです

こう考えるとクリアにならないでしょうか


次章では、FFを題材に環境シミュレーションRPGは如何にして可能かを述べ、本論を締め括りたいと思います

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る