補遺1 オープンワールド

オープンワールドは、マップがシームレスということを表しているのではなく、広大なマップを活かしてゲームデザインをしているかというような抽象的なことを表しているので、ただ、シームレスなだけではオープンワールドと呼べませんし、マップが広大なだけでもオープンワールドと呼べません

シームレスでなくてもオープンワールドらしいゲームデザインはあり得るし、マップが広大でなくてもオープンワールドらしいゲームデザインはあり得ます


2章では、洋ゲーがもたらしたオープンワールドを、日本人が取り入れ、FF12やゼノブレイドができたと述べましたが、洋ゲーより先に、ゼルダの伝説やロックマンDASHが、オープンワールドをもたらしたと述べるユーザーもいます

オープンワールドは、3DCGの進化と共に、自由度の低いリニアゲームに抵抗する形で現れたという経緯を無視し、起源だけ主張しても意味がありません


オープンワールドと呼ばれるゲームを、ポスト3Dマリオやポスト3Dゼルダと呼んだり、3Dマリオや3Dゼルダをプレオープンワールドと呼ぶことは可能かもしれません

しかし、3DマリオやBotWより前の3Dゼルダをオープンワールドに含んでしまうと、オープンワールドが現れた経緯が滅茶苦茶になってしまいます

エヴァンゲリオンを、ゼロ年代のセカイ系と同列に扱うことができないように、BotWより前のゼルダの伝説やロックマンDASHを、現在のオープンワールドと同列に扱うことはできないのです


ただし、ゼルダの伝説が先駆的であり、示唆に富むゲームであることは否定しません

全ての3Dゲームは、ゼルダの伝説を避けて通ることはできないでしょう

オープンワールド以前は、テクノロジーの発展とグラフィックの進化が結びついていたので、時のオカリナより後に、オープンワールドが現れるのを直線的に理解することができました

オープンワールドより後の現代は、テクノロジーの発展は必ずしもグラフィックの進化と結びつかなくなり、BotW以後、なにが現れるのか直線的に見通すことが困難になっています


オープンワールドとゲームの高画質化・大容量化は結びついていましたが、もう、そういう時代ではなくなりつつあります

これは、ハードよりソフトが大事というような単純なことではありません

BotWは、求められる答えが一つでない――システムの制約をなくしたゲームデザインを、物理演算によってなし遂げました

テクノロジーの根幹が、半導体の進化からゲームエンジンの進化へ、パラダイムシフトしているのです

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