第4話

「食卓に結衣がおるやなんて、なん年ぶりやあ?」


がたっ、と椅子を引いてテーブルについた父親がわたしの顔をじろじろと見ながら言う。


「四年やな」


ポットを片手に兄が椅子に座ると低い、低い声でそう言って、ほれ、とわたしの前のコップにお茶を注ぐ。ありがと、と呟けば母親の声がそれに被さった。


「四年も実家に挨拶こうへんであんたは本間どうしようもないねんから」


「忙しかったんやろう。なあ?」


味噌汁を並べていく母親を諭すように祖父が私を見て笑う。


「せやけど年末年始くらい...」


母親は未だに言い足りない様子で、わたしをみては眉をひそめる。


「飯の前にやめえ」


父親のその一言で黙り込む母親は少し乱暴に椅子を引いて、ほら、食べえ。と私を促した。昔からこうだった、じっと、何をして居ても見られる。そうして、一つでも間違えればすぐに指摘される。小学校に上がる頃には両親に見られることがこの上ないストレスになっていた。今も、私がお箸をどう使ってご飯を食べるのか、なんていうのか、全部見られている。もはやこれは監視と言って良かった。今すぐにでも立ち去りたい衝動をなんとか抑えて味噌汁を口に含む。


「美味しい。」


そう言えば母親はやっと気が緩んだような顔をして「いただきます、くらい言いなさい」と言って自分の食事を始めた。


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