六回裏の攻防 1
六回裏を迎えたレッドスターズ。攻撃は先制のホームスチールを決めた石川からである。
もちろん、ダイヤモンズバッテリーの警戒心は最大限に達していた。
投手にとって、俊足のランナーというのはそれほど厄介なのである。強打者と対峙したとしても、その打率は良くて三割。一方で、走塁に関しては好不調の波が少ない上に、投手の集中力を削ぐ効果もある。
どれだけ制球力のある選手であっても、一塁ベース付近でスタートを狙っている走者がいれば、少なからず気になるものである。
そういう意味でも先頭の石川の意味合いは大きかった。逆に、石川を打ち取ればダイヤモンズにとってかなり楽になる。おそらく大八木はこの回でマウンドを降りることが濃厚で、本人も最後の力を注いでくるだろうと森国は予想していた。
「さて、どうすれば良いものか」
レッドスターズベンチでは森国が首を捻っていた。本来の作戦であればホームスチールの1点を守り切って終わるのが理想だった。しかし、同点に追いつかれた今、新たに得点を奪わなければならない。
と、バッターボックスの石川がネクストバッターズサークルの鮫島に近寄り、何やら耳打ちをする。そして、打席に向かった石川。すると今度は鮫島がベンチへと戻ってきて森国に伝言を伝えた。
「あの、監督、石川が『好きにやらせてください』って。必ず出ます』って言ってるんですが」
その時にはもうすでに大八木は第一球を投げようとしていた。そこから何か作戦を考えたとしても、指示している余裕はなさそうだった。
「そうか。それなら、石川がそこまで言うなら、任せよう。信じるしかない」
レッドスターズベンチの視線は石川に注がれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます