一人二役
五回裏、レッドスターズの攻撃はフルパワーの大八木の前にまたも三者凡退。
試合は投手戦の様相を呈してきた。
七回の時点でリードを奪っていればダイヤモンズは勝利の方程式であるリリーフ陣を投入してくる。ただ、大八木の全力投球を考えれば、同点であっても七、八、九回と分業にして勝ち越しを狙う可能性もある。
そう考えればレッドスターズにとっては六回裏までになんとか勝ち越したい思いがあったのだが、五回もあえなく無得点。ベンチにとって喉から手が出るほど欲しい1点だが、その1点が遠く感じられた。
六回表のレッドスターズのマウンドには、そのまま藤堂が送られた。
しかし、違っていたのは、この回から藤堂が右腕にスイッチしたことだった。これは大きな武器である。一人で、一試合の前半と後半に違う球筋のボールを投げられるからだ。
しかも、場合によっては打者の左右によって投げる腕を変えられる。一人ワンポイントリリーフができるのだから。
藤堂は先頭打者である8番朝倉を四球で出塁させたが、次の9番大八木が送りバントを失敗。ピッチャー前に強く転がり、それを見事、併殺に仕留めた。1番織田に対してはチェンジアップとツーシームを引っ掛けさせて2ー2と追い込み、最後はスライダーでショートゴロに打ち取った。
そして、六回裏のレッドスターズの攻撃を迎えるのである。
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