第3話
扉を開けた先には、あちこちに不規則に存在している七人がいた。みんながみんな他の人の存在をないかのように扱っている空気が伝わって来た。
「おはようございます!」
そんな空気を打ち消そうと元気な挨拶をする。しかし反応してくれるのはごく少数の人たちだけだった。
「えぇ、おはよう。愛ちゃん」
「……おはよう」
金髪でセミロングの青の目をしている人と、眼鏡を掛けてフードをして髪型までは分からないけどチラリと見える前髪が白色であることが分かる人が挨拶を返してきてくれた。どちらも一つ上の先輩で、七人の中で喋れる人たち。
「まだ
「はあぁー、良かった! あの人、普段は優しいけど怒ると一生追いかけてくる勢いで来るから良かったわ」
「それは愛ちゃんの場合だけよ」
気軽に話すことが出来るのは金髪の先輩こと、ユーナ・グレイソン先輩だけ。あとのメガネの先輩であるフィリス・メルクリ先輩はこちらの問いかけには答えてくれるけど向うから話し掛けてくれることは、私の記憶の限りではない。
ユーナ先輩は、私の隣で他の人から分からないけど少しだけ縮こまっている麗誠に声をその気軽さで話し掛けた。
「麗誠ちゃんもおはよう」
「……おはようございます、グレイソン先輩」
「そんな堅苦しい名前呼びじゃなくても良いのよ?」
「いえ、結構です」
「それは残念」
「おいっ!!」
二人が会話しているところに、突然の大きな声が部屋中に響いた。近くにいた私たち(私と麗誠)はビクッとした。こんな大きな声を出すのは七人の中で一人しかいなく、勢いよく振り向いた。
「もぉ、いつも言ってるけど、近くで大きな声を出さないでくれる!?ビックリするのよ!」
「んな事知るかよ!それより何でここに地支がいるんだよ。雑魚が入るところじゃねぇぞ」
「何度も言っていますが、地支を天干の下位属性と考えるのは辞めていただけませんか?サール先輩。実力は同等のはずです」
「あ?そんなことは誰も聞いてないんだよ、雑魚は引っ込んでろ。それに地位で言えば
「はいはい、こんなところでケンカしないで。もうそろそろでボスが来るわよ」
スキンヘッドで言動から想像できる目つきの悪いルーファス・W・サール先輩は私と同じ天干の一人でよく私たちに突っかかってくる人。私たちの何が気に喰わないのかはわからないけど、麗誠に対してそれが強く見られる。それに対抗して反論するが、ユーナ先輩が止める図が形成されている。
「チッ!!あぁーあ、なんでこんな弱そうなやつらが天干を名乗っているのか!名高い天核学園も落ちたものだな!」
弱いやつと言われても別に構わないけど、後ろにいる憂はそうでもなさそう。むしろさっきから雰囲気が“怒”をまとっているもの。
「それは言い過ぎよ、ルーファス。貴方も愛ちゃんたちの実力をまじかで見たでしょ?だから彼女たちはここにいるんだから」
……ユーナ先輩は本当に良い先輩!天干に入った頃の見ず知らずの私をかばってくれた。憂はユーナ先輩の事が苦手そうだけど、なんでだろう?
いつもより少しだけ悪い雰囲気が漂っている中、外から扉が開かれた。
「またあなたたちはケンカをしてるの?毎回止める身にもなってよね」
「大丈夫よ、ボス。もうケンカは終わってるから」
扉から現れたのは、ユーナ先輩がボスと呼ぶ存在である紫髪のポニーテールをしている憂のお姉さんこと、虹色美結先輩。美結先輩がこの天干の実質のリーダー。
「さ、席に着いて。天干会議を始めるわ。いつもの事だけど、洗浄慈さんは真瞳さんの隣に座ってね」
「はい」
「……チッ」
サール先輩の舌打ちを無視して、麗誠は私の隣に座る。そしてその反対側にはユーナ先輩がいつも通りに座る。憂は私の隣に座ろうとしたところを両方取られたから身体をあちこちに彷徨わせていたが、結局私の背後に立つという形で落ち着いた。
「それでは会議を始めます。今回の招集内容はお伝えした通り、ある二つの種族の間で問題が発生しています。早急に対処するように先生方からお達しがありました」
私が天干になってから、初めて大きな仕事だわ。これまでは施設の修復やここを良く思っていない輩が少数で攻めてきたものが有ったけど、下手をすると戦争が勃発するような仕事は初めて。でもこの仕事を私が受けるとは限らない。それに天干全員でやるような仕事などないと言われているし、したことがないわ。天干同士の仲が悪いというのもあるけど。
「では今回のメンバーを発表しますが、今回は規模から考えて地支組と連携してこの件に当たります」
「はぁ!?なんでだよ!?天干で当たればいいじゃないか!天干だけでできない案件だって言うのか!?」
「そういう風に毎回毎回噛みつくのはやめてくれない?サールくん。それに天干全員が協力できれば天干だけでできるわ」
「何も全員でやらなくていいんだぞ!俺だけで十分だ!」
「それは物理的に無理。この仕事は二つの種族を見ていないといけない。まだ実力で押さえつける段階ではないから、こっちから何もアクションを起こせないの」
「毎回うるさいぞ、ワイバーン。貴様の言動は目にあまる。さっさと口を閉じろ」
「っ!!ドラゴンだからって調子に乗るなよ。ワイバーンが弱いって事はないんだからな!」
「ワイバーンなどドラゴンの下位種族だ。必然的にドラゴンの方が強いのは当然だ」
窓際の方から聞こえてきた冷静で冷徹な声音で、立ち上がったサール先輩のボルテージもMAXに近く戦闘用のオーラを身にまとってきた。
白みがかった青色の髪をしているノヴォ・ペステリ先輩も少しだけ魔力を開放させている。
それよりもいつ見ても良い男よね、ノヴォ先輩は。あの服の下にはどんな筋肉が眠っているのかしら。それにあの冷たい目で見られるのも良いわね!
「辞めなさい、今は会議中です。場をわきまえてください」
美結先輩の重い一言で双方攻撃的な雰囲気を収めて、美結先輩は話を続ける。
「天干からは真瞳さんとメルクリさんで当たってもらいます。他の人は用途に合わせて動いてもらいます。二人は今から地支の会議室に行って入念な作戦を立ててください」
「はーい!」
「……」
ボスの言葉に私は返事をしてフィリス先輩は頷いた。
……早速大きな仕事が来たわね。これに失敗したら私はどうなるのかしら?
「大丈夫よ、愛ちゃん。失敗しないように私もフォローしてあげるから」
私の心配が顔に出ていたのか、ユーナ先輩が励ましてくれた。やっぱりいい人だ。
それに大丈夫よ。私は天干。こんなところで失敗しているのでは名乗れないわ!
「行きましょうか、フィリス先輩」
「……」
安定の声を出さないコミュニケーションで意思疎通をはかり、二人して会議室を出ようとする。
「私も行きます」
「……そうよね、
「そうです。それに私も選ばれているかもしれませんから」
「じゃあ三人で行きましょう」
私と麗誠、それにフィリス先輩が席を立ち扉に向かうが、一人、余計な者が付いて来ようとした。
「貴方はダメよ、憂。貴方には他の仕事が待っているんだからサボるのは許されないわ」
「くそっ!、こういう時はそこにいる地支の方がうらやましく思える」
「ふん、さっさと席について自分の仕事をしてくださいね、天干さん」
「チッ」
麗誠はさっきのお返しとばかりに嫌味らしく天干を強調して、私たちと一緒に教室を出た。
オネエでゲイな私がハーレムで修羅場っている 二十口山椒 @munouhawatashi
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