第6話

「ドライブしようか」

 約三週間お預けを食らってやっと蒼太君があたしにいった。

「はい!」

 場所は観光地で有名なところ。最近おしゃれな観光地としてテレビでも取り上げられていた。

 ものすごく楽しみ! 

 当日、めいっぱいのおしゃれをして、蒼太君を待ち合わせ場所で待った。いつも通り蒼太君は来ません。

 約束の時間より三十分過ぎたので、電話してみると、ドライブモードだった。よかった。ちゃんと家は出てるんだ。

 二時間待ってやっと来た蒼太君は珍しく車だった。それもスポーツカー。

「乗って」

 なんだかドキドキしながら助手席に乗り込む。

「車、持ってたんだね」

「うん……」

 心なしか、蒼太君は顔が青い。どうしたんだろう。

 高速に乗り、一路観光地へ。

 と思ったんだけど……

「ごめん、トイレ」

 蒼太君は高速に乗ってからしょっちゅうトイレ休憩をした。どうしたのかな……運転する人が酔うなんてあるのかな?

「大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫」

「本当に大丈夫? 帰ってもいいんだよ?」

「大丈夫って言ってるだろ!」

 心配して何度も聞いたのが気に障ったのか、蒼太君が怒鳴った。こわい。どうしよう。怒らせちゃった……

 蒼太君は気まずそうに黙ってたけど、優しい口調で言った。

「何度も休むけど、ちゃんと運転するから」

「うん」

 なんか無理に連れて行ってもらってるようで怖い。

 通常二時間半でつくはずの観光地に、三時間強かかって到着した。心なしか、蒼太君は安どで顔が青い。

 午後過ぎてついた観光地は人でごった返していた。おそらく蒼太君はまた歩き通すに違いない。あたしはそう予想してべた靴はいてきた。

 こういう観光地にはおいしいスイーツがたくさん売っている。そういうのねだっていいのかわからなくて全部我慢したら、最後に蒼太君がお土産屋さんに行こうと誘ってくれた。あたしが迷っていると、

「買ってあげるよ」

 と蒼太君が笑って言う。本当に?

 ご当地名物のブルーベリージャムを買ってもらった。すごいうれしい。まァ、そのジャムは姉さんがほとんど食べちゃったんだけど。

 さすがにおなかがすいたと思ってたら、蒼太君がそばが好きだからと蕎麦屋に。そばか……あたしは周囲のかわいいこじゃれたレストランを横目に、少し気落ちして同行した。

 食べ物くらいでどうこう言うなんて、心狭いかもしれない。と思いなおした。

「じゃあ、かえろうか」

 え? 

 遅めのお昼を食べて一時間で蒼太君はもう帰る気ままだった。まだ明るいけど……初めての遠出なんだけど……手を握っただけで、キスもしてないんだけど……あの……少し期待して勝負下着なんだけど……

 はい、ごめんなさい、帰ります。

 蒼太君は暗くなる前に私の家の近くまで送ってくれた。わがままいっちゃだめだね……でも……

「ね、耳かして」

「ん?」

 チュ

 あたしは蒼太君の耳にキスをして急いで車を降りた。何事もなかったように手を振って蒼太君の車を見送った。

 蒼太君は顔が引きつってた……驚かせたかな……むしろ嫌がられたかな……不安。

 その夜、電話で蒼太君に驚いたと言われたあたしでした。

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