第5話

 友人なんかはあたしが、初恋で一目ぼれとか言うと、幻想だって言う。そんなのはあり得ないと。まず一目ぼれがありえないらしい。どこか妥協しながら好きになるもんなんだって。でも今はどこに妥協してるのかがわからない。

 蒼太君って呼び始めた時から二カ月。いきなりあえなくなりました。仕事が忙しんだって。多分本当。どうしても会いたくて、毎日電話で泣いたけど、無駄でした。

 その代わり次に会うときはどこかに出かけようって言ってもらえて、ものすごくうれしくて、その日が来るのを今か今かと待ち構えている始末。

 そんなあたしのことを友人は、うまくいくわけないよなんてやっかんでます。やっかみなのか、何なのか……初恋はうまくいかないって言われたけど、本当にそうなの?

「こんど、いつ会えますか? 来週は会えますか?」

「まだ、無理。十二月に入ったらね」

 会えない間、あたしは教えてもらった住所に毎日ラブレターを送った。はがきで送ったら、迷惑って言われたから、封筒で。

 ほぼ毎日日記なんだけどね。でも気にしない。ご飯を食べるとき、ふとした時、布団に入る時、いろんなときに蒼太君を感じて、その気持ちを伝えるだけ。気持ちが伝わってたらいいなとは思うけど、きっと贅沢だと思う。

 会えない時間、散歩をしながら自問自答した。

 スキってなんだろう。蒼太君に感じる感情は本当に好きという感情なのだろうか。私はどうしたらいいのか? 蒼太君に対して何ができるだろうか。

 雲は何も答えず流れて、風も私の疑問に答えてはくれない。

 あたしにできることは、スキという気持ちを信じることと、蒼太君をありのまま受け入れること。スキという気持ちは私のエゴ。わがまま。それを否定したら、多分、蒼太君を好きという気持ちは私の勘違いってことになる。スキという気持ちが自己満足であることを否定しない。でも、なおかつ、蒼太君が蒼太君らしくあることをうれしく感じようと思った。

 ひねくれてて、冷たくて、わがままな蒼太君も蒼太君なんだって。急に優しくなるのもやっぱりそうなんだって。……これって世間で言うツンデレなのかな?

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