022 かみさまのピンチ?




 かみさま、ピンチ!

 と、思ったけど、そうでもない。


 だって、かみさまはかみさまだもの。

 そこらの生き物に脅かされるほど柔じゃないんだなあ!

 まあ、それ以前にかみさま大好きっ子のむにゅ達がいるから問題なんてない。


 むしろ彼等の暴走が怖い。

 今も、天誅しますか? みたいなワクワク感をかみさまに向けてくる。

 そんなことしたら悪者達を追跡出来なくなるじゃないか。

 かみさまはむにゅ達へ落ち着くように伝えて、誘拐されちゃおうと待ち構えた。


 男達がニヤニヤ笑いで手を伸ばしてくるのをワクワクしながら待っていると、むにゅ達からもワクワク感が届いた。

 それもいい! と考え直したらしい。


 さあ、捕まっちゃうぞ!

 というところまで行った時。


 かみさまの前に大きな人影が入り込んできた。


「させるか!!」


 ドコン、と結構えげつない音がして、かみさまはアチャーとなった。

 なんたって男達が吹っ飛んじゃったからだ。


 やったのはシルフィエルで、魔法を使って飛ばしたみたい。


 追ってきちゃダメだと言っていたのに、付いて来て、更に手を出してしまった。


 うーん。


 でもまあ、かみさまが好きなんだもんなあ。

 さっきから、かみさまへの愛がダダ漏れなんだもの。

 しようがないな~!


 ただし、そういうわけにもいかないのが目の前の結果なわけで。

 男達のうち一人がワタワタと慌てて起き上がり、逃げてしまったのだ。

 残りは倒れ込んでいる。

 シルフィエル、やり過ぎ。

 魔法使いはこれだから!(他の魔法使いにまで飛び火してるよ!)



 しようがないので、かみさまはシルフィエルに「よくやりましたね」と、ちりめん問屋風に声を掛けてあげた。


 むにゅ達には倒れた男達を捕まえるよう命じる。

 すると、それはもう嬉しそうにわらわらと集まって男達にへばり付く。


「口を塞いだら人間は死ぬからね?」


 止めなさいね、という意味だったのに、クロポンとカビタンが嬉々として塞ごうとした。


「ちがーう! 前振りじゃないから!」

『『あーい……』』


 そんな、お笑いの人がスベったみたいな顔されても。

 芸達者はいいけど、危険な遊びはやめてほしい。



 シルフィエルはシルフィエルで、誉められた! と喜んでいるし。

 なんだか彼女を信者第八号にしてもいいかもしれない。

 ちょっと抜けてるところが、アリかなと、思うのです。



 というわけで、男達を公園の茂みの中に連れて行った。

 ダイフクに結界を張ってもらって尋問だ。


 何故かむにゅ達だけでなくシルフィエルまでワクワクしている。


「こんなに可愛くて、いたいけな子を誘拐しようとするなんて、おじさん達は小さな子が好きなの?」

「ち、違う!」

「じゃあ、どうしようとしたの?」

「……そ、それはっ」


 顔を見合わせているのは、視線で相談している証拠。

 答えないって手もあるけど、かみさまの後ろにはこわーい魔法使いシルフィエルが睨みを利かせている。だから、迷っているのだ。

 むにゅ達がコチョコチョしてるからではない。

 たぶん。


「早く答えないと、また吹き飛ばされるよ~」

「そうよ~」

『『そうだーそうだー』』


 あ、やっぱり。むにゅ達は男達の体に張り付いて、何やらしでかしている模様。

 男達が気味悪そうに体をもぞもぞさせている。

 ある意味、拷問かしらね。


 かみさまは、ぷくくと笑いながら、魔王様風に脅してみた。


「ねえねえ、知ってる? 拷問にはね、笑いすぎて死ぬ、っていうのもあるんだよ~」

「「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」」


 タイミング良く、むにゅ達が突っついたみたい。

 大して痛くもないのに飛び上がっていた。





 男達は、案外素直に吐いた。

 やっぱり、クリスを攫うつもりだったらしい。

 本国から突然連れてこられたクリスを「面倒を見るように」とだけ言われたペーペー達は、色気を出してしまった、わけ。

 つまり、やんごとなき血筋の子供だと思って「攫って身代金を!」と考えたらしいんだけど……。

 リスク大きいのに、踏み切っちゃうなんて君ら大丈夫か?

 だってバレたら死刑レベルなんだよ~。

 かみさま、こわいなー。


 ぷるぷる震えてたら、むにゅ達が「ここでてんちゅする?」って嬉しそう。

 いや、だからね? やらないから。

 なんだってそんなに「てんちゅ」好きなの……。


 それはさておき。

 安易に悪事へ手を出すようなおバカ達は、なんと、ついでにかみさまも攫っちゃってお小遣い稼ぎしようと思ったらしい。

 とんでもプンプンだ。

 おっと、かみさま、造語っちゃった。決して、とんでもハップンだなんて言いたかったわけじゃないの。

 むにゅ達は意味が分からないなりに、『プンプン』と言いながら手を出したり引っ込めたりして、男達の上を歩いている。

 さすが持つべきものは眷属なのです。



 まあこれで、男達が完全アウトー! なのは分かったので、方向性は決まってしまった。シルフィエルとも、これヤバイよねーってことになり、男達はむにゅ達が捕まえて連れて帰ることになったのである。

 またしても誘拐!

 立派な男性を抱える可愛いむにゅ達!

 それ見て「可愛いぃ!」と悶えるシルフィエル、変態!


 かみさまは関係ない人のフリをして、ついていった。

 誰に見えてなくとも、天網恢恢疎にして漏らさず、なのだ! それちょっと違うってツッコミは要らないのである! かみさまの強権発動なのであるー!

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