014 王都到着、ダメ騎士、ダメ○○
なんだかんだで旅を楽しみつつ、かみさま達はとうとう王都へ到着した。
途中の街ではこの国のことや常識的なことをエラスエルから学び、かみさまは女神様から与えられた知識以上のことを知った。
その姿はまるで小さな格好良い竜のようだが、あくまでも蜥蜴であり、蜥蜴が飛ぶのを想像したそのまんまだ。そして想像以上にバッサバサと飛ぶので酔いそうである。
やはり、空を飛ぶならむにゅ達が一番だなあと、思ってしまうかみさまだった。
もちろん、まだ乗ってもいないアルにそんなことは言わないし、むにゅ達に言えば調子に乗っちゃうので黙っておく。
さて、王都である。
ここまでもそうだったように、頑丈な壁に守られた場所を抜けるには門兵のチェックが必要だ。
さすがに
顔を見ただけで素通りである。
まあ、一行の印籠持ち、もとい従者係となっているダスティがお仕事してきたんだよという体の命令書をドヤ顔で見せていたのだが。
とは言え、門兵達はどうぞどうぞと通してくれた。エラスエル様ーとアイドル並みの声がけだ。
ちょっと羨ましい。
ちなみに付いてきていた騎士達は、普通に通り過ぎようとして騎士章を確認させられていた。
大丈夫かな、騎士。
と、思ったら、最近騎士のフリをした男達が事件を起こしているようだ。
護衛をしてくれていた彼等を疑って申し訳ないことをした。
「いやー、やっぱり旅続きで汚れてたからかなあ」
「お前、風呂に入ってないだろ。だからだよ」
「そう言うお前も臭いじゃないか」
「俺達あんまり服を着替えないもんな」
「俺なんて、パンツ10日替えてない」
「「「「着替えろよ!」」」」
うん、門兵に「騎士」かどうか疑われるのも仕方ない。
ダスティはやっぱり苦々しい顔で後ろから付いてくる騎士達を見ていた。
護衛が守護する相手を待たせてなんとすると、言いたいのだろう。
エラスエルとシルフィエルは、かみさまとむにゅ達に「あっちがお城でー」とか「妖族が多く住むのはー」とのほほんと説明して時間を潰していた。
エラスエルはかみさま達を自宅に招待してくれた。
冒険者や商人っぽく宿を取ってみたかったのだが、ぜひぜひと引っ張られてしまった。
そんなにかみさまのこと大好きなの、と思ったけれど、ダスティいわく「何やらかすか分からない不安がありますよねー」とのことで、カビタンに天誅されていた。
ちなみに、愛情ある天誅はただのチョップである。
カビタンの場合は水が出て来るのでちょっと困りものだけど、やられたダスティは苦笑いで諦めていた。
ところで、愛情のない天誅はもちろんヤバいので誰も未だ受けてはいない。
ただ、騎士達への天誅ごっこは結構危険だ。
『ひぎ もちつまり!』
『ひぎ こしょこしょ きわみ』
『ひぎ ひまつり』
『ひぎ みずぜめ』
『ひぎ つるくさ しばり』
『ひぎ うめごろし』
『ひぎ てっぺん つるぴか』
各自、なにやら編み出しているようなのだが、どこから突っ込んでいいのか分からないかみさまだった。
とりあえず、死なせないようにね、と言い聞かせている。
なんたって食べないのに殺生することはかみさまのポリシーに違反するのだ。
ものすっごく悪い奴なら、やっておしまいなさい、と言うつもりであるが。
そんなわけで、王城への帰還の挨拶をほっといて、先にエラスエルの家へと向かった。
家と言っても随分立派なお屋敷で、弟子も沢山住んでいるようだ。
シルフィエルの部屋もあるとかで、後で案内してもらうことになった。ぬいぐるみがいっぱいあるので、むにゅ達に並んで欲しいとかよく分からないことをお願いしていた。
彼女は黙っていれば美女と呼ばれるそうだが、ダスティや騎士いわく相当残念美女らしいので、残念である。
弟子達は予定よりも早い師匠の帰宅に驚いていたものの、かみさまと、姿を現しているむにゅ達を見て絶句していた。
誰かが何かを言おうとしたのに、エラスエルは被せるように早口で喋った。
「人間の、召喚士様です。お小さい方々も妖精ですので、決して侮ったりしないよう」
どこかで聞いた台詞である。
コピペかしら。
「分かりましたね!?」
「「「「「はいぃっ!!」」」」」
弟子達は震えながら、何度も頷いていた。
お部屋は南向きの一等良い場所で、偉い人をお招きする客間なのだとシルフィエルに教えられた。
でも南向きって、暑いんだよね……。
子供の勉強部屋には向かないそうだし。
なんだか庶民みたいな考えが頭をよぎるかみさまなのだった。
アルのお世話もしてくれるそうで大変助かる。
宿を借りる場合、
小金持ちのかみさまだけど、もったいないヨと心の奥底から叫びが聞こえてくるので、
そんなこんなで慌ただしく説明してくれていたエラスエルとシルフィエルだったが、さすがに帰還の報告は必要らしい。
下っ端のダスティや騎士はもちろんなのだけど、大魔法使いであるエラスエルもまた別の意味で、挨拶しないといけないのだそうだ。
というわけで、かみさまとむにゅ達は屋敷の玄関で彼等を見送った。
振り返ると、弟子達や屋敷で働く者達がピキーンと固まって立っていた。
「……お屋敷の探検、してもいい?」
「「「「「もちろんでございます!!」」」」」
やったあ~と喜んだのはむにゅ達だ。かみさまのGOサインを待たずに飛んでいってしまった。
最近益々自由だけれど、一体誰に似たのかなあと思うかみさまである。
かみさまは大人で賢いので、ちゃんと付き添いを頼む。
選んだのはメイド服の侍女、ではなくて、くれぐれもよろしくと頼まれていた弟子の中で一番上の人だ。
空気を読むかみさま、偉い。
その弟子は中年ぐらいの年齢で十分大人なはずなのに、かみさまが手を差し出すと震えながら手の甲にキスしてきた。
違う違う、手をつなげという意味だ。
と言いたいのだが、震え方が半端ない。かみさま、そんなに怖くないのだけどなあ。
見た目が子供のかみさまなのだから、てっきりお手々つないでランランランだと思ったのに。
というか、エラスエルとシルフィエルに繋がれていたせいで癖になっていたようだ。
かみさまはちょっぴり恥ずかしくなった。
とりあえず仕切り直しである。
「ゼロと一緒に探検してくれる?」
「は、はははいぃ!! 光栄です!!」
今度はちゃんと手を繋いでくれた。良かった。
お屋敷内を隅々まで案内してくれた弟子1号は、慣れてくるとエラスエルがどれほど素晴らしい大魔法使いかを話してくれた。
彼の弟子として恥ずかしくないよう、必死で頑張ってきたのだと話す。結婚もしておらず、ストーカーみたいな大ファンだ。
もっとも、弟子の中では結婚している者の方が少なくて、シルフィエルも年頃を過ぎているのに未婚らしい。
彼女の場合は別の問題で結婚できていない気がする。
エラスエル自身は結婚していたが病気で妻を亡くしたらしい。
愛妻家だったので後添えを取らず、以降は私財を投げ打って弟子達を育てることに腐心しているとか。
かみさまより、よっぽど神様らしい大魔法使いだ。
ところで、むにゅ達の探検はとんでもないところまで行われていたようだ。屋敷を歩いている間、あちこちから悲鳴のような声が上がっていた。
「きゃー! それは下着です、ダメですぅー!!」
「おお、なんだこれ! 直角に飛んでいったぞ!!」
「地下から光とネズミがーっ!! ああっ、飲み込まれてしまった!?」
「ぺっ、してください! 病気を持ってるかも!!」
「それは煮えたぎってますー!!」
「煤で汚れますから出てきてくださいー!!」
「あっ、蔓草を伸ばしちゃダメですよ!! それは刈り取って整えてるんです!!」
わーきゃー、と楽しいのだか楽しくないのだか分からない叫びが聞こえて、かみさまと弟子1号は顔を見合わせた。
「……眷ぞ、じゃなかった、むにゅ達がご迷惑をおかけして――」
「いえ。でも、皆のことが心配ですので、戻りましょうか」
結局、大丈夫なことと大丈夫でないことをお互いに教え、返すものは返させて、ぺっしたらダメなものは処分して、汚れは浄化し、整えるべきは整えさせて終了した。
反省のため、むにゅ達にはお屋敷の人のお手伝いを命じておいた。
全号楽しげに了解していたが、皆さんは震えが来ていたようだった。
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