006 眷属の能力と洋服作り
かみさまは仮にも神の見習い、ほぼ神である。
よって、ちょちょっと創造するぐらいは出来たりするのだ。なんたって眷属まで作っちゃえるほどなのだから。
しかし、当然ながら神の作るモノには力が宿る。
眷属達は生きているので彼等自身が気配を消すなどの能力を使って、本来の力を隠すことも可能だ。
けれど、たとえば服を作るとすると、服は服であるが、それには神気が宿ってしまう。
女神様が作ったものでなくとも、ほぼ神でも作れば聖物扱いになるのだった。
そんなもの、来て歩いていたら誘拐される。
といったことを説明すると、むにゅ達は慌ててかみさまに駆け寄った。
誘拐されないで!
誘拐の前に殺す!
誘拐されたら助ける!
誘拐したやつ吹き飛ばす!
誘拐したやつ巻き巻きにする!
誘拐したやつ埋もれさす!
誘拐してもピカッとするから逃がさない!
なかには過激なことを言う子もいたが、みんな可愛い。
ではなく、ようやく理解してもらえた。
裸で外を歩いてはいけないということと、かみさまが創造して作ってはいけないということに。
「ということで服を作ってほしいんだけど」
誰が出来るかなーと、各自に訓練の成果を聞いてみる。
かみさまも一緒に旅してきたし、そもそも眷属なので能力については分かっているのだが、報告を受ける上司、というのをやってみたかったのだ。
まずは全号、空間能力は持っている。
葉っぱも枝も、石も、どうかするとそのへんの岩や木々も取り込んでいたので。
それ以外の、個性としての能力はというと――。
ダイフクは浄化や治癒などに特化されていた。
それ以外に、小麦粉や餅などが取り出せると言う。
「え、まさかの炭水化物担当?」
かみさまもそこまでは分からなかった。大体、なんで小麦粉が出てくるの。いや、そういうイメージが混ざってしまったのだなと、餅みたいな姿を見ながら納得することにした。
クロポンは罠や毒など、黒をイメージしたためか闇魔法っぽいものに特化されている。気配探知もクロポンが担当してくれていた。
その他に、獣関係が得意らしい。
「獣が得意って、え、狩るの? 捌くの?」
なにゆえに。
たぶん、かみさまがものを食すことを知って、黒担当らしく引き受けたようだ。
チダルマは火に特化している。これは赤イコール火という、かみさまのイメージから来ているので仕方ない。
その他に、料理を作るのだと張り切っている。
小さなダルマ人形の姿でどうやって作るつもりなのか聞いてみたいが、後回しである。
カビタンは水特化だ。これまでも水を出してもらって、シャワーを浴びたりしていた。
カビタンにはお風呂を担当してもらうことにした。
他に、氷も作るよ、とのことだ。
オジサンは植物関係に強い。緑の妖精をイメージしたので、そのまんまである。
野菜を取り出したり、育てることもできる、と胸を張っていた。
また、蔓を編んだりもできるらしい。服はオジサンに頼むのが良いかもしれない。
ヒヨプーは土関係に秀でて、モノを作ることが得意なようだ。
試しにお風呂を作ってと頼めば、基礎から作り上げていた。あっという間の出来事だった。
その後、カビタンが水を入れて、チダルマが温めてくれたので、全員で入る。
ぽかぽかして気持ち良いのは、土の中から良い成分を抜き出して入れてくれたからのようだった。
かみさまもぽかぽか気持ち良くさせるとは、侮れないむにゅ達なのだ。
で、カガヤキは何に特化しているかというと、そのまんま灯りである。
光り物が好きなので、反射するモノはとうぜん見つけ出せるそうだ。鉱石を探すのもできるよと明滅して自慢していた。
お風呂の後も会議を続け、かみさまの服はオジサンを中心に全員で作ることにした。
かみさまは指示係で、観察担当だ。
早速オジサンが服の素材となるものを山の中から探し出してきた。オジサンが新たに作り出すと、聖物とまではいかなくとも、見る人が見れば非常に問題となる素材とバレてしまうからだ。
木の繊維やワタなどを抽出し、ヒヨプーが作った紡績機で糸にしていく。
その間にクロポンが草木染めの用意、汚れはダイフクが浄化していく。
水はもちろんカビタン担当だし、すぐに乾かす必要がある場合はチダルマだ。
で、カガヤキが何をしているのかというと、応援、ではなくて。
鉱石を探して砕き、装飾品にするのだそうだ。
目立たないよう小さなものにしてね、と頼んでおいたがさてどうなることか。
出来上がった服は、丸襟の長袖シャツと足首までのパンツ。どちらも締め付けないようにゆったりしていて、パンツは裾を絞っている。
それにチュニックをかぶり、ベルトをすれば完成だ。全て植物由来のもので作られている。
靴は、草原鼠の革を鞣したもので作ってくれた。クロポンのおかげだ。
ベルトの中央には翠玉の欠片を嵌め込んでいる。カガヤキが探してきたものだった。
他にリュック鞄も作ってくれており、帽子もあった。これは高原山羊の毛を紡いで糸にし、編んでくれた。ポンポンがついているのはクロポン一押しだから。
「うわー、格好良い!」
かみさまが喜ぶと、むにゅ達も喜んだ。
かみさまに身に着けてもらって嬉しい!
と、飛び跳ねている。
興奮の余り、どこかへ飛んでいってしまってなかなか帰ってこない子もいたが、楽しい一時となった。
これがきっかけで、むにゅ達は進化していくのだが、この時のかみさまに知る由はなかったのである。
かみさまだけど、未来までは見通せないのだ。
とにかく、これでようやく人の世界へ足を踏み入れることが出来るようになった。
あいつ裸だぜ、と後ろ指をさされずに済むのだ。
かみさまはなんとなく想像してブルッと震え、それから、文明的な生活に触れてないとどんどん常識というのが薄れてゆくんだなと思った。
なにしろ、裸であることが普通で、服を着た時には逆にとても居心地悪かったのだ。
かみさまなのに、あのままだとウホーウホーと叫んで野生生活に馴染むところだった。
知的生命体の上位に立つべき存在なのに。
神々のおわす、あの場でも、裸の神様が多くいた。裸族である。
かみさまはあそこまでの境地に至ってない。至りたくないので、文明的生活をするのだ。
というわけで、第一村人発見まで、もうすぐ――。
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