005 人の国までの道のり
かみさまの眷属であるむにゅ達は、体の中にものを出し入れすることができる。
神樹からもらった葉や枝も、取り込んでいた。
かみさまもやろうと思えばできそうなのだが、神力が付いた、また別の何かになりそうな予感がして止めた。
それに荷物持ちは部下がやるものだ。
なんとなく、そんな気がする。
かみさまはむにゅ達と力の使い方を訓練をしながら、大きな大きな森を飛び跳ねて出ていった。
森を出るのに10日もかかってしまった。
かなり早いペースだったのに、だ。
どれだけ大きい森なんだと、かみさまは振り返って見てみる。が、視線だけだと全容は分からない。
思わず神の目で見ようとして、止めた。
ぶわわっと漏れ出る神力に、草原にいた生き物達が硬直したのが分かったからだ。
慌てて訓練の成果を発揮する。
神樹の森にいた時よりも更に抑えることが出来た。
いくら人間が鈍感だとはいえ、かみさまの姿を見たら恐れおののくかもしれない。
女神様だってお忍びで街に降りて、神気を感じ取られ騒ぎになった過去があるようだ。
与えられた知識の中に、そうした歴史のくだりがあった。
以後は上手に隠しているようで、かみさまもそうした努力を重ねなくてはならない。
「むにゅ達や。ゼロの神力はもう見えない?」
聞いてみると、ほぼ全号が頷いた。
何故、ほぼなのかというと、カガヤキは基本的に円形であり、手足も滅多に出さないので動作だけでは意思が伝わらないのだ。
まあ、心は通じているので、言いたいことは分かるのだが。
かみさまは満足そうに頷くと、振り返っていた体を元に戻し、草原のその先を見つめた。
はるか遠くに岩場が見え、霞む先に山々が連なっている。
かみさまだから見えるのだ。
「あれを越えて、ようやく人の世界だね!」
うんうんと頷くむにゅ達に、かみさまはがんばろーと声をかけてまた飛び跳ねるように草原を進んだ。
転移をすれば早いのだが、それは神の力を使うことになる。なので地道に走っていくほかないのだった。
途中で、眷属に運ばせたら良いのだということに気付いた時、かみさまは地面へ四つん這いになって落ち込んだものの、ダイフクにみょんと丸い触手で撫でられ慰められ、なんとか復活した。
眷属の力は大きいが、そこに神力はない。
女神様の眷属である精霊と同じように、大地や空気の中にあるエネルギーが元になるものだからだ。
それを人はマナと言ったり、魂の力と言うらしい。
とにかくも、沢山の眷属に囲まれているかみさまなのだ。
彼等も使役されることに喜びを感じているので、目一杯働かせよう。
「じゃあ、運んでくれる?」
任せて!
1号から7号までが了承してくれたが、誰が載せるかで話し合いになってしまった。
大好きなかみさまを載せるのは自分だと、円を組んで語り合う(念話だが)。
小さいむにゅ達のその姿は見ていて可愛いが、いつ終わりが見えるのか分からない。
かみさまは提案してみた。
「とりあえず、順番にひとりずつ運んでくれたらいいんだけど」
分かった!
というわけで、栄誉ある1番目は生まれた順番でダイフクからとなった。
ただ、小さい姿の彼等に持ち上げられる図というのはちょっと、いやかなり、ビジュアル的にはどうかと思うかみさまであった。
いろいろ試すうちに、むにゅ達は体積を変えることも可能だということに気付いた。
まあ、触手のような手足がみょんみょん出し入れ可能なのだから、考えるまでもなかったろうが。
というわけで、途中からは大きくなってもらって、大型ビーズクッションに寝転ぶような格好での移動となった。
第三者が見たらダメなやつだと思ったが、これが居心地良すぎて、かみさまはダメになってもいいと心の中でジャッジした。
そうしたわけで、延々と続く草原に、荒野のような不毛の大地、やがてゴツゴツした岩場へ差し掛かり、とうとう険しい山並みへと突入した。
えっちらおっちら運ばれて、時にスーッと円盤モドキに乗せられたり、キュンと音速で移動したりと楽しんで、かみさま達は延々と連なる山を制覇し、人の国へと足を踏み入れた。
長い長い旅だった。
草原からこっち、3日ほどだったけれど、距離は神樹の森よりも遠かったので。
人の国へ入っても、人が住む気配はまだ感じなかった。辺境の地と呼ばれる場所だからだ。
とはいえ、いずれ辺境の村へ辿り着く。
となると第一村人に会う前に、まず身形を整えないと通報されるかもしれない。
かみさまは、はだかんぼうなのだ。
「全号集合ー。これから会議を始めます」
はーい、とむにゅ達が集まった。
「もうすぐ、人の生活圏に突入します。ここで大事なことは、人の決めたルールを守らなければならないということであります」
むにゅ達は手を叩いてわーわーとガヤを入れてくれる。
話をちゃんと聞いているぞという、相槌のようなものだ。
良い子達である。
「さて、人の生活において、まず最低限やっておかねばならないことは?」
はい!
チダルマが手を上げた。
かみさまが指差すと、チダルマはずいっと前に出て、いかにも喋っている風に身振り手振りで動きながら念じてくる。
チダルマが言ったのは。
人らしく振る舞うこと!
「なるほど、それも当たりだね」
と言うと、まだ答えはあるのだ。
そう気付いた他のむにゅ達がまた手を上げた。
今度はカビタンを指差す。カビタンはスーッと前に出て、前後に体を振るように動いて、伝えた。
挨拶は大事!
「うん、挨拶は大事だよねー」
その後も意見は出たが、大事なことをみんな忘れている。
かみさまは厳かに告げた。
「あのね、人間はね、裸でお外を歩いちゃいけないんだ」
むにゅ達の間に激震が走ったようだった。
彼等は慌てて、そのへんにある葉っぱをむしり取り、服に見立てようとした。
ダイフクは、柏餅になった。
クロポンは、黒米チマキになった。
チダルマは、変身に失敗した狸だ。
カビタンは、葉(トイレットペーパー)を引きずったスライムにしか見えない。
オジサンは、マントみたいにしているので変態仮面にしか見えない。人型だから余計。
ヒヨプーは、葉をつける意味がない。そもそもアヒル型だ。背中に乗せてどうする。
カガヤキは、明滅して、どこの素敵な間接照明かという。
かみさまは冷静に告げた。
「君達は眷属なので見えないようにしてもらうからね? あと、裸で歩いちゃいけないのは人間の格好をしているかみさまだけです」
むにゅ達は、ガーンと念話で告げつつ、その場に崩れ落ちていた。
なかなか芸達者になってきている眷属達であった。
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