Ⅰ・星の子と星なし_1
Ⅰ・星の子と星なし
星の光には、不思議な力があるのだという。
夜空に
しかし、星はそれぞれ一人しか子を選ばない。夜空に星多しといえど、目に見える星の数はたかだか数千だ。
星に愛されず、選ばれなかった人々。星なしと呼ばれる……星の光を持たない人々の方が、星の子よりも、ずっとずっと多いのだ。
冬の夜空は
空気が
言わずと知れた
これが冬の大三角。これを道しるべにすれば、明るい星の多い冬の夜空でも迷うことはない。
「ああもう!」
見上げた視線を地上に下ろそう。
夜空に八十八の星座があるように、地上も八十八の
「ついてない!」
ここは冬の宮、こいぬ区。その名にふさわしく、こぢんまりとした
夜空から遠く離れた地下鉱山。
四方八方に伸びた
とはいえもう夜。採掘作業はとうに終わり、鉱員たちも穴の底にある自分たちの家へと帰った後だ。彼女が道を急ぐのには理由があった。
「直前に場所が
暗い坑道を走り
彼女の名前はアステラ。もうすぐ十六歳になる。
「しかもたまたまエレベータが整備中で、鉱山鉄道は目の前で
アステラの法則一、急いでいるときに限って不測の事態が
そして息を切らし、アステラが
「よかった、間に合った!」
かつての採掘現場
「そろそろ店じまいだぜ。目当てのものがあるなら急ぎな」
すれ
そこには、形も色も様々な石が並んでいる。小指の先ほどの大きさのものから、
これが、
星の原じゅうの鉱山で日々掘り出される、特別な石だ。
「なんて
アステラは露店の間を
「いて座から直送、三等星のアルナスル石!
「お
「お客さんの中に鉱員の方は?
そう、ここは星輝石の市場だ。
星輝石、それは星の光を宿す特別な石。人知の
薬になり、燃料になり、照明にもなる星輝石は、星の原では
(いけない、つい目移りしちゃった)
アステラは深呼吸した。冷やかしに来たわけではない。彼女には探しているものがあった。
「今日こそ出会えますように。『ダイヤモンドの中の花』……」
そう呟くと、アステラは年老いた商人の露店の前で
広げた布の上には木製の
「お嬢さん、何かお探しかね?」
老店主が声をかけると、アステラは
「
「
親星によって、星輝石の色や形はばらばらだ。
「
アステラは大きな紺色の目を見開いて、迷いなく答えた。
「ダイヤモンドの中の花を探してるんです」
「はあ? そりゃどういうことだい?」
老人は不可解な
「見つけたぞ、アステラ!」
「きゃっ!」
「ロキさん!」
そこに立っていたのは、背の高い青年だった。
ロキと呼ばれた彼、年のころは二十代半ばほど。
「こんなところで何してるんだ? 万年クビ
「うっ、もうバレてる……」
アステラはきゅっと
「ここには来るなって言ったろ。帰るぞ」
ロキは
「あ、ちょっと、ロキさん!」
どきん! アステラの心臓が跳ねた。と同時に、紺色の
「あ、あわわ!」
がしゃああん!
ロキの手を振り
「アステラ!」
ロキがすぐさま彼女を
「アステラ、
「わ、私は大丈夫です、けど……」
アステラは目の前の露店に恐る恐る、目をやった。
倒れた棚が
「……嘘でしょ」
アステラの顔は
「お客さん、困るよお!」
大災害からなんとか
「ご……ごめんなさい」
消え入りそうな声でそれだけ
「……相変わらずだな、アステラ」
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