あしおと、爪痕、ENTER KEY⑨

 語彙力の壊れた瑠璃の弁解も終わり数秒、白けた沈黙が降りる。

「――面を上げい。」

 半端ない圧を放つお奉行様みつこ

 真剣な表情の三子から、深みある落ち着いたバリトンの声が放たれる。

 ハイライトの無い瞳を瑠璃に向けたお奉行様の沙汰が今下される!

 雰囲気だけ御白州に沈黙が走った。

「――死刑ッッッツ!!!」

「OH NOOOOO!!!!」

 弁護人なしの厳罰のお裁き。

 両頬を押さえてへこませた、瑠璃の嘆きの叫びが昼下がりのレストランを駆けめぐる。

 大声のためか、席を埋めた学生達に一瞬のざわめきを走らせた。

 歓声を上げて拍手する真央。

 とても無垢な笑顔である。

「めでたし、めでたしだね?」

「ゥオイ!私の命を大事に!?」

 下手人の突っ込みも笑顔でスルーする傍聴人A役の真央。

 そこで咳払いがひとつ。

「と、言いたいところですが、瑠璃さんは早いところ合コン《決戦》の場に行ってくださいね」

「ほっひィ!?――良いの?」

 断罪された悪代官がごとくうろたえていた瑠璃が固まる。

 不意打ちすぎで涙目になっているようだ。

「瑠璃さん自身だけでなく、近しいみなさんの幸せと併せて総取りも躊躇ためらわない。

 そんなハングリースタイルを失くしたら、瑠璃さんじゃないですよ。

そういう訳で行ってらっしゃいです。吉報をお待ちしてますね。」

「お、お、お、応援してくれるの!?

 もちろん!明日からは絶対、私も全面協力するから。いい男ゲットしたら二人にもイケメン仲間紹介するから。楽しみに待ってて。

 やるわ! 私の魅力があれば今度こそパーフェクトヒューマンをものに出来るわ。――では、行って参ります!!」

 瑠璃が軍人ばりの敬礼を真央と三子にかましてみせる。

 二人はただ静かに戦地に向かう親友の背中を押した。

 後押しされたその女の子は戦乙女ヴァルキリーがごとく凛とした気迫を纏っていた。

 ・・・・・・慰めの準備をしておこう。

真央と三子。二人はアイコンタクトすらなく心が一つになっていたのであった。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 数分後。

 話を本題に戻す二人であった。

「え~~っと。割と重めだったはずの話の続き、聞いてもいい?」

 恐る恐る、真央が切り出す。

「――もちろんです。聞いてくれますか?」

 三子は再び口火を切ったのであった。






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