あしおと、爪痕、ENTER KEY④
「すとーかー?に私、狙われちゃってるかもしれないんですよ」
想定外の三子の告白に真央は目を丸くして固まった。茶室でお茶をいただくように、静かに水のグラスの、中身をあおろうとして、
「んむぐっ!?げほごほぶほげべぶふべべほっ――!!!」
割と命の危険がありそうなレベルに噎せた。
瑠璃が慌てて背中をさする。
「真央ッ。落ち着きなさいよ・・・・・・、もう。」
「ふーっぱあーツ。びっくりしたあアアアアアーッ」
真央は、どうにかこうにか水をゴクゴク飲み干して息をつき、叫んでしまう。
「みっちゃん、ストーカーって危ない人につきまとわれてる感じのストーカー?まさか襲われたりしたの!?大丈夫なの!!?」
「ありがとうございます。でも私はなんともないですから、心配かけてしまってすいません。」
三子が上品に頭を下げる。
「もっと早く相談したら良かったんですけど、最近まで自分でなんとかできると思ってしまっていたんです。今更ですけど、浅はかでした。」
三子が言葉を紡いだ一瞬の間、幾つも年をとったように真央には見えてしまった。
「何度か同じ知らない人に声をかけられたり、誘われたり。その時はなんとか避けてたんです。でも頻度が増えてきて少し怖くなってきて、お母さんとお父さんに相談したんです。」
真央は自分の唾を飲み込む音が店中に響いたような気がした。
「警察にも相談して、運転手の伊藤さんにも下宿先の玄関まで送っていただくようにしていたんです。今思えばそれが馬鹿でした。」
俯く三子から聞いた話に、真央は体温の自己主張が熱く激しくなるのを感じていた。
悪い話で、しかも真央にとって人生を変えた、父を失った事件から見えるようになった世界に関わるとしか彼女には思えない内容だったのだから。
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