四章 舞踏会は終わっても_3
数日後、
「謝ろうとしたのに、リーテは放っておいてって言うだけだし。ヴィヴィは忙しいからって相手してくれないし。なんか……あたし妹たちに
それだけ
あえて心中を口に出すイザベラは、
「……フリッツ…………」
思わず
「なんでいきなり帰っちゃったんだろ? せっかく来たなら、お茶くらい。その間にちょっとあたしの話聞いてくれても……。うぅん、だめ、だめ。忙しいって言ってたんだから。あたしの勝手で時間取ってほしいなんて、そんなの…………」
いつもの笑顔が見たかったのに、思い出すのは厳しい面持ちのフリッツばかりで胸が塞ぐ。
家の用事で嫌なことがあったか。フリッツを怒らせるようなことを自分がしていたのか。どちらにしても嫌だ。イザベラは
「だから、今はフリッツのこと考えてもしょうがないでしょ。あの子たちみたいにフリッツがうるさく思ってたにしても、あたしが、変わらなきゃ」
言ってはみたものの、何もしないままではいられないが、何をすれば改善に
「あぁ、もう! いいわ、もう一度話しにいこ。いつまで放っておいてほしいか聞けばいいのよ」
本人に聞けば一番早いと、イザベラは
善は急げと寝室を出て、使用人にリーテの居所を聞くが、誰も言葉を
「……みんな知らないなんて。リーテ、あたし以外にも放っておいてって言ってるのかしら?」
ドーンが
リーテを案じながら、イザベラは念のため裏門付近や使用人食堂の裏まで足を延ばした。
「リーテ、こんな所にいたの? いったいいつからそこにいるのよ?」
思わず問いかけたイザベラに、首を
「ねぇ、イザベラ。わたしの
相変わらず使用人のお仕着せを身に纏うリーテは、言われてみれば前掛けをしていない。
「え、何処かに置き忘れたの? あたしは見てないわよ」
相変わらず家事にも身が入らないリーテは
「あたしが管理してるのはリーテのドレスだけでしょ。なんであたしに聞くのよ?」
「使用人たちが、イザベラの嫌がらせじゃないかって言うから」
リーテの
「何よ嫌がらせって。なんであたしがリーテの前掛け
「でも、前掛け余らないの。わたしのだけないから、盗られたんだって……」
言われて、イザベラも頷いた。使用人の服は支給品で、必要に応じた数だけを仕立てている。財産管理の
「そうね、数が合わないのはおかしいわよね。後は、風に飛ばされたとか……」
ふと気づいて、イザベラはリーテに弁明を聞かせた。
「言っとくけど、本当にあたしじゃないからね? あたしがやるなら、前掛けだけなんて
「うん、イザベラならそうすると思う。……ねぇ、前掛けなくなったから、新しい使用人の服ちょうだい。みんなに配ってない予備の服があるって聞いたの」
「服が必要なら、ドレスを用意してあげるって前から言ってるじゃない」
言って、イザベラは口うるさかっただろうかと、
「なくなったの、前掛けだけじゃないんだ。ずっと、少しずつなくなってるの」
「え……? 少しずつって、いつから何がなくなってるの?」
イザベラは思わぬ言葉にリーテへと
「舞踏会に行ってから、かな。
ぼんやりすることの多かったリーテは、最初なくなっていることにも気づかなかったと言う。
「リーテの不注意……、にしてはちょっとおかしいかもね」
リーテの言い分から察するに、使用人はイザベラが隠していると疑っているらしい。
「……まさか。──ね、ねぇ、リーテ。もしかしてヴィヴィとは仲直り、してない?」
首を
「仲直りって……、なんで? わたし
本気で思い当たらないらしいリーテに、イザベラは
「ちょっと、リーテ。あれだけ口喧嘩してて
自分で言っていて情けなくなるイザベラは、
「あれ、口喧嘩なの? 喧嘩、したつもりないけど……」
「リーテにそのつもりがなくても、ヴィヴィはそうじゃないかもしれないでしょ。もしかしたら、物がなくなるのは怒ったヴィヴィの
イザベラが言い募ると、リーテははっきりと否定した。
「ヴィクトリアは、そんなことしないよ」
リーテを見れば、空色の大きな
「ヴィクトリアは、イザベラと違ってわたしのために何かするなんてことないよ。嫌がらせだって、隠れてするより目の前でやって、イザベラの反応見て笑うでしょ」
実の妹のことをリーテに
「ん? じゃ、あたしに前掛けのこと聞いたのは、あたしが隠したと本気で思ったってこと?」
可能性に気づき、イザベラは目を
「うぅん。でも、使用人たちが絶対そうだって、うるさいから」
言われるままにイザベラに
一度開いた口を閉じて、イザベラは思い
自分勝手な押しつけでは、フリッツにも
「……リーテ。その、色々強要して、ごめんね。いっぱい
イザベラが
そう思っていたイザベラは、続く私物の紛失に
「どうして……、
なくなるのはリーテの物だけ。明らかに、何者かの故意が
盗難疑惑の真相とは――?!
続きは本編でお楽しみください。
いじわる令嬢のゆゆしき事情 灰かぶり姫の初恋/九江桜 角川ビーンズ文庫 @beans
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