14話「パーティギルドを探して2」

「へへ、凄いでしょ? 私の魔法!」


 誉め言葉を受けて得意気になるルッカさん。

 少し位俺の心配をって言いたいけど自分をぶん殴って来た相手に心配されるのってそれはそれでひでー話だよな。


「新人冒険者の中では物凄い魔法力ですよ!」


 拳に力を入れ力説するウィザードさん。

 あの、そろそろ俺の心配をして頂いても良いんですよ?


「有難う御座います!」

「はぁ、それにしても痴話喧嘩なんて羨ましいモノですね」


 うん? すげー明るい人と思ったけどいきなり闇でもおんぶしたかの様にすっげー暗くなったぞ、この人。

 って、ルッカさんの前でそんなこと言ったら……いや、流石に初対面なら大惨事にはならないよな?

 

「え? そう見えますか?」


 …………は? ルッカさん? なんで嬉しそうにしてる訳? 今まで毎回全力で否定してた癖に有り得なくね?


「そうですね、全力で雷魔法を撃てるなんて相当の仲じゃないと無理ですよ」


 ああ、相当悪い仲か納得した。

 しかしルッカさん、全力ライトニングぶっ放した後にこにこ居られるってひでー性格してるよなぁ、まぁ昔からだけど。

 さて『ヒーリング』で何とか立てる位まで回復したけど、このまま寝続けても意味が無さそうだしさっさと立ち上がろう。


「いつつつ……」

「は? カイル? 何でもう起きるのよ!」


 立ち上がって早々大声を上げるルッカさん。

 いや、10秒前の貴女は何だったんだ? いつもの事だから良いんだけどさぁ?


「ははは……うらやましいですね、ホント」

「「そんな事ありません」」


 今度はしっかりと、いつも通りルッカさんが否定をし二人の否定すする声がハモる事になった。


「はぁ……貴方達はシュバルツ・サーヴァラーに入ろうと思ってるんですよね?」

「いえ、入ろうか考えてる程度です」

「そうですか、ナイトの方は入れないと思います、お嬢さんはあれだけの魔力があるから入れるとは思いますが……」


 ウィザードさんが口籠る、このギルドには何かマズイ事でもあるんだろうか?


「あまり推奨はしません、というのもここのギルドマスターがダストって言うんですけど、彼の性格はお世辞にも良いとは言いません」

「え? じゃあそれでも所属してる人が居るのは?」


 それも聞いた話だと女の子が多いそうだ。

 いや、俺は別にとある学友と違ってそういうのに興味は薄いんだけど。


「そうですね、僕が知ってる限りの話ですが、ここに居る人は昔から居る人達で今も惰性で残っている人達ばかりと聞きます」


 惰性? どういう事だろう?


「先代のギルドマスターは良い人だったんですが、移籍か何かで別の場所に行ってしまい、そこで新たにダストがその地位に就いたのですが、良い噂を聞かないと言った所です」

「そうだったんですか、御親切に有難う御座います」

「いえいえ、あ、自己紹介がまだでしたね、僕はエリクと言いまして、ヴァイス・リッターに所属しています、そんな訳と言っては何ですけどもし興味があったら宜しくお願いします」


 うーん、結局この人が所属するギルドに勧誘するのが目的だったのか。

 良い人の様に見えるけどさて……?

 

「僕はカイルと言います」

「私はルッカです」

「それでは、僕はやる事があるのでここで失礼します」


 そう言うとエリクさんは一礼をしその場を立ち去った。

 

「おい! エリク、テメェ何邪魔してやがんだ!」


 その直後、ギルドハウスの中から罵声が飛んできた。

 彼がダストだろうか? 確かに口が悪いな。

 

「あん? 新人か? ケッ! 新人の分際で俺様のギルドに近付くんじゃねぇ! 消え失せろ!」

「あ、はい、すみません」


 うーん、ダストって人に関してはエリクさんが言った通りだ、このギルドに入るのは止めた方が良さそうだ。

 どう考えてもこの人と関わるのは面倒だと思った俺達はそそくさとシュバルツ・サーヴァラーを後にした。

 

「ねぇ、カイル、アイツにファイア・ボール撃って良い?」

「どうせ俺達の魔力じゃ無効化されるだけでしょ」

「チッ、それもそうね」


 どうやらルッカさんもダストに対して悪く思ってるみたいだ。

 ダストに対して悪態をつくルッカさんと共に次のギルドへ向かった。

 

「ねぇ、ねぇ、カイル? ヴァイスリッターに行くの?」

「え、うーん、そうだね、エリクさん悪い人じゃなさそうで他にあても無いし」


 他にもパーティギルドは沢山あるんだけど、同じギルドに所属するであろう人が良い人そうなのは結構重要って思う。


「私、他も見てみたい」

「それは別に構わないけど」

 

 沢山あるんだし色々と見る事も大事か、ここはルッカさんに合わせて他のギルドも見てみよう。


「お、ジャスティスオブナイツだって、なんかカッコ良くて良さそうじゃん!」


 名前もカッコ良いし、カッコ良い鎧に身を纏ったナイトっぽい人が沢山集まってるっぽい、俺もナイトだし……。

 でも、今までのギルドみたいにナイトじゃなきゃダメかなぁ? いやいや、確認してみないと分からないぞ!

 このパーティギルドを見た俺はいつになくテンションを上げるが……。

 

「ふーん? 私興味無い」


 ルッカさんは宇宙の真理でも説かれた蟻の様に興味を示していない。

 何故だ? どう考えてもふんどし一丁のムキムキマッチョマンよりは美しい鎧に身を纏ったナイトの方がカッコ良いのに!


「ええ? さっきのむさ苦しい男は良いのに?」

「そうよ? だってあいつ等正義を振りかざして堅苦しそうじゃん?」


 確かにルッカさんの言う通り、ナイトって自分達の正義を他人に押し付けそうな感じはするけども。

 

「いやまぁ、そうだけど熱苦しいよりは良くね?」

「チッチッチッ、何も考えずにただ真っ直ぐ、熱く戦うのが良いのよ!」


 まるで何かに憑依されてるかの様に熱く語りだすルッカさん。

 こりゃー俺が何言っても聞く耳持たなさそうだし、だからと言ってここで「ふんどし一丁で?」何て言ったらまたライトニングをおみまいされるだろうからやめておこう。

 

「確かに脳筋って楽そうだよなー」

「むっ? 何か言った?」


 って、小声で言ったつもりなのに意外と聞いてやがる。

 

「いや? 何も?それより次のパーティギルド見に行こう」


 ジャスティスオブナイツを諦め、次はそこから4軒先にある『漆黒の闇』と言うパーティギルドの前にやって来た。


「何か、厨二病患者が好みそうなギルドだね」

「うん、そうだね、私もそう思う」


 珍しく二人とも意見が一致し、このギルドは微妙だからさっさと次に行こうと口に仕掛けた所で、

 

「ククク……奇遇ですねカイル君」


 俺の頭上から暗く薄気味悪い声が聞こえて来た。

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