13話「パーティギルドを探して1」

-???-


「テメー、この街を支配する力を貸してくれるっつーのは本当だろうな?」

「そうだ」


 暗い一室にいるのは上位ウィザードと翼を生やした悪魔の様だ。


「ハッ! この俺様がセザールタウンを制圧してやんだ、有難く思えよな?」


 高級な椅子にふんぞり返る様に座りながら悪魔としゃべる彼は相当な実力でもあるのだろうか?

 

「我等からすれば誰がどうしようが関係無い事だ」


 そんなウィザードの対応に対し全く持って興味無く悪魔は返す。


「フン生意気な野郎だぜ」

「人間の中にも貴様の様な裏切り者が居るとはな」


 どうやらこのウィザードが人間を裏切って悪魔に手を貸している様に伺える。


「俺は俺様が支配できねぇ事がクソ気にいらねぇんだよ!」

「そうか、ならば我々を失望させぬ様にな」


 悪魔はニタッっと笑みを浮かべるとダストに杖を渡しその姿を消した。


「うるせぇ! 俺様を誰だと思ってやがんだ! ……ケッ、おいセリカ! 今貰ったこの杖を試せ!」


 ウィザードは悪魔から受け取った杖に手を触れるも、何かが気に入らなかったのか、はたまた杖の性能を把握しきり適性の高い人間が自分以外である事を悟ったのか分からないが、即座に女ウィザードを呼び寄せこの杖を渡した。


「ハッ、仰せのままに」


 セリカと呼ばれた女ウィザードは転移術を使い彼の目の前に現れると杖を受け取り丁重にお辞儀をすると再度転移魔法を使いその場を去った。



―セザールタウン―


「多分この辺だと思うけど……」


 俺とルッカさんは、パーティギルドを探すべくリンカさんに言われたエリアにやって来た。

 それにしてもこの辺りは様々なギルドハウスが立ち並んでるなぁ。

 普通の家みたいな建物から、剣や盾や魔法をイメージしたり形も丸だったり三角形だったり四角形だったりと個性豊かな建物ばかりでこれらを見てるだけで一日つぶせそうな位だ。

 通りを歩く人達も、ファイターやナイト、レンジャーにウィザードだけでなく、その上位職と思わしき人達が見受けられ、俺達が稼ぐお金では到底買う事が出来ない高価な防具を身に付けている人達も沢山いるぞ。

 

「ねぇ、あのギルド面白そう!」

「どれどれ?」


 ルッカさんがニコニコ笑顔ではしゃぎながら指さした先には『熱き漢の魂』と書かれたパーティギルドがあった。

 

「あのー、ルッカさん? 意味分かってます?」

「うん、分かってるよ、みんなで熱く魂で語り合うんだよね? 面白そうじゃん!? ちょっと漢の意味は分からないけどね」


 あーそう言えばルッカさんってああ見えても謎の熱血女だっけ。

 熱血と無謀は違うと思うんだけどなー、でも本人は熱血って思ってるしそんなもんなのかー?


「そっすかそっすか」

「さっ! 行くよッ!」


 ルッカさんに半ば引き摺られる形で俺は『熱き漢の魂』ギルドハウスの中に入った。


「腹筋1000回始め!」

「押忍!」


 ギルドハウスの中を覗いてみると今はどうやらトレーニング中の様で、ギルドメンバーらしき男達がふんどし姿で腕立て、腹筋、スクワット等の筋トレをしていた。

 

「たのもー!」

 

 ルッカさんはそんな空気を一切気にしていない様だ。

 いや、女の子ならせめてふんどし姿の男みたらちょっとぐらいドン引きしようよ?


「ぬははは、道場は破らせんぞ!」

 

 ルッカさんの声に反応した一人がこちらに向かって来た。

 

「いえ、僕達パーティギルドを探してまして」

「そうよ! このルッカ・ランティスいざ尋常に勝負を求む!」


 と、ウィザードの装備を身に纏ったお嬢ちゃんが筋肉ムキムキで背丈も高いマッチョマン相手に指を差し高々と言っております。

 

「はっはっは、可愛いお嬢ちゃんじゃないか!」


 ギルドメンバーの人は冗談と捉えて居るみたいだ。


「へへん! 女だからってっ甘く見ると後悔するよ!」


 それに対するルッカさんがこれ、先のコカトリスの件と言い君の自信は何処から湧いてくるんですか?


「その心気は買おうぞ!」


 腕を組み、ニカッと笑顔を見せるムキムキマッチョマン。

 滴る汗が男らしさを物語る。


「良いんですか!」


 ルッカさんは目を嬉々と輝かせる。


「ではお嬢ちゃん、速やかにファイターへと転身するがよい」

「ぐっ、ウィザードを諦めなければ……?」

「そして我がギルドの正装は……」


 ムキムキマッチョマンが他ギルメンのふんどし姿を指差す。


「はっ!?」


 何を考えたのか急に顔を真っ赤にするルッカさん。

 ……男と変わらないじゃんって言ったら最大出力の電撃魔法食らうんだろうなー。

 ……でもなんか言ってみたくなるなー。


「ガッハッハ、その様な姿を多勢に見られる姿を恋する者に見せるのは荷が重かろう、ウィザードが集まるギルドとなれば『シュバルツ・サーヴァラー』と言うギルドがある、そこには多数のおなごがおるぞ」

「ファイターになれないから仕方ないよね、ルッカさん、シュバルツ・サーヴァラーにいこうか? ……ルッカさん?」


 流石に言っちゃまずいから止めた。

 って、ルッカさん? まだ固まってるんだけど……。

 

「し、失礼しましたー」

「ハッハッハ、また気が変わった時に来るが良いぞ!」


 俺はルッカさんを引きずる形で『熱き漢の魂』を後にした。


「もぉぉぉ! カイルの馬鹿! 変態!」


 暫く歩いたらルッカさんが突然意味不明な事を言い出した。


「百歩譲って馬鹿は良いとして、変態ってなんだよ」


 いや、待て、馬鹿も譲るなよ俺。

 

「何って! 私のあの姿そーぞーして嫌らしい事考えたんでしょ!」


 一体何を言ってる? 想像って? なんじゃ?


「嫌らしいって? 何が? ルッカさんの場合別に周りと変わらなくね? そりゃー多少きんに……ふぇっ!?」


 ちょ! ルッカさん? 黄オーラに包まれてるんですけど! 何で雷魔法詠唱して……?

 あ゛! しまった、さっき言ったらぶちのめされると思ってた事をついつい誘導? されて口を滑らせちまった!

 ルッカさんの魔法を防ぐべく俺は慌てて『ウィンド・バリア』を展開する。

 ダメだ、ルッカさんの般若みたいな形相見る限り多分これだけじゃ防ぎきれない、こうなったら『フレイム・バリア』と『アイス・バリア』を展開して相殺して『ウォーター・バリア』をつく……。


「カイルの、ばかああああああ!!!!!」


 ルッカさんの叫び声と共に物凄い雷魔法が展開され……。


「ぎゃあああああ!?!?!?!?」


『ウォーター・バリア』が間に合わない! 俺はルッカさんが多分限界を超えた魔力を込めた『ライトニング』の直撃を『ウィンド・バリア』でしか軽減出来ず計り知れないダメージを受け地面に転がる事になる。

 くそっ……上位属性をダイレクトに出せない仇がここで表れちまった……。

 てか、滅茶苦茶痛いんですけどこれ。

 

「大丈夫だよ☆ 手加減してライトニングにしておいてから☆」


 言う割に滅茶苦茶収束させてますやん……。

 俺は朦朧とする意識の中『ヒーリング』を完成させ受けたダメージをぢみちに回復させる。


「見事な雷魔法ですね」


 男の声だ。

 朦朧とする意識の中、霞む目の中その姿を映すと、そこには小さめのレンズである眼鏡を掛け、緑色のとんがり帽子を被り、魔導師が着るローブに身を纏った青年の姿が目に映った。

 ウィザード……? こんな人セザール学園には居なかった。

 いや、着ている服からウィザードの上位職だと思うけど、そんな人が一体何の用だろう?

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