15話「パーティギルドを探して3」

 この声質、この厨二感忘れはしない、これは確かセザール学園の同級生、


「ルッド君じゃないか! 久しぶりじゃん!」

「えっと……誰ですか?」

 

 ってルッカさん? 機動力系の試験で物凄く競ってたじゃん! 忘れちゃったの!?

 

「ルッカさん? ルッド君覚えてないの? そりゃー根暗で中二病患者で存在感薄いし、レンジャーだって言うのに何故か『ニンジャ』とか何とかを目指し始めた痛い人だけど、でも彼は優しいし良い人だし、そんな彼を忘れるなんてあんまりじゃない?」

「ねぇ、カイル? 私、目の前で人の悪口を言ってる君の方が酷い人だと思うんだ」


 ぐっ……確かにルッカさんの言う通りだ、せめて優しくて良い人と言うべきだったか!? でもそれじゃ彼の個性を伝えられないし……。


「いや、その、すまん、ちょっと言い過ぎた」

「ククク……流石セザール学園を全教科トップの成績で卒業したレヴィン君、僕の事をしっかりと把握して頂けてる様で光栄ですよ、何ぶんあのセザール学園ですら僕の存在に気が付けたのはレヴィン君位ですから……」


 と思ったらルッド君は俺の事を光栄に思っているらしいけど、彼の事は本当によく分からない。


「ねぇ、カイル? 本当にこの人誰なの?」


 ルッカさんが俺が着ている服の袖を引っ張りながら俺の後ろに身を潜めた。

 

「同級生のルッド君、彼は非常に優秀で国王軍に所属したんだよ」

「あ、そう言えば今年国王軍に入った人の中で良く分からない、いつも黒装束を身に纏ってる不審者が居たよね」


 ルッカさん? 貴女も何気に酷い事言ってませんか?


「フフフ、ご名答ですよ、僕はこのギルドを担当する事になりましてね……しかし、残念な事にレンジャーでなければ入れないのですよ……」

「そっかぁ、それは残念」


 そう言う事なら仕方がない、次のパーティギルドを見に行こうと思った所で、


「あら? ルッド君? お友達かしら?」

「フフ……そうですよ……セフィア姐さん」


 レンジャーの装備品、それもぱっと見で冒険者ランクが高い人が身に付けるような奴を身に纏った女性がルッド君に声を掛けた。

 多分俺よりも年上のお姉さんで、何処か妖艶な雰囲気を纏ってるんだけど……ひょっとしてパーティギルドに所属すればこんなお姉さんと知り合う事が出来るのだろうか?


「ぎゃああああ!!」


 なんて事を考えてたら突然右足に痛みが走った!


「ねぇ、カイル、急に大声を出して一体どうしたの?」


 俺の目をまじまじと見つめ、物凄く心配そうな声を上げるルッカさんだけど。


「ルッカさん? 俺の足をぐりぐりしてるのは何かなぁ?」


 その下では俺の足を踏んずけてぐりぐりしてるんですけど。

 

「え? ごめんね、わざとじゃないから」


 ルッカさん? 足を踏ん付けた上にぐりぐりするってわざと以外でどうやってやるのか教えて欲しいなぁー。


「ウフウ、随分と仲の良いボウヤ達じゃなぁい?」


 そんな俺達の様子を見てニャッとしているセフィアさん。

 いや! 僕達全然仲良くありませんから! 人にライトニングぶっ放してくる暴力女と仲が良い訳ありませんから!

 でも、それ自体セフィアさんは知らないけど、でも思いっきり足踏ん付けて来る、しかもぐりぐりしてくる女と何をどう見たら仲が良いと思うのか疑問に感じる。


「ククク……レヴィン君とランティスさんには面白い噂が立ってますからね」


 ルッド君はルッド君で薄気味悪い笑みを浮かべながら言って来る。


「面白い噂って何さ」


 どーせ下らない一方的にルッカさんが俺をライバル扱いして来るとかそう言う事でしょ?


「フフフ……秘密ですよ……」


 って、その程度の事も秘密にするんかい!


「別に良いけどさー」


 はぁ、相変わらずルッド君はよく分かんないなぁ。


「所で、ボウヤ達はここへ何しに来たのかしら?」

「……私達はパーティギルドを探しに来てます、お姉さんはここのギルドの方ですよね? 私達はレンジャーじゃありませんので、失礼します」


 ルッカさんがセフィアさんに対して何故か敵意を剥き出しにしている。


「あら? ごめんね、人のカレシを奪う趣味は無いから安心して良いわ」

「誰がこんな奴!」


 セフィアさんはルッカさんを茶化してる様に見え、それに対してルッカさんは言葉を真に受けて顔を真っ赤にして完全に否定している。


「いや、ただ勝手にライバル扱いされてるだけですよ」

「むっきー! そうよ! こいつとはただのライバルですから!」


 うん? 仕方なく俺がフォローしてやったってのに、どーしてルッカさんは仕方なくライバルって言ったんだ? いつもそうやって言ってる癖に。

 

「ふーん? そう?」

 

 セフィアさんが何かを悟ったかの様に不敵な笑みを浮かべている。


「ククク……セフィア姐さん、そろそろ本題に映っては如何でしょうか?」

「それもそうね、ボウヤ達をからかいに来た訳じゃないし、単刀直入に言うわ、ヴァイス・リッターに入らない?」


 え? セフィアさんもヴァイス・リッターの人? それにしても、どうしてヴァイス・リッターの人が立て続けに俺達の目の前に現れたのだろう? ルッド君も何か知ってそうだし、何か違和感があるなぁ。


「うーん、俺はそうさせて頂きたいですけど……」


 だからと言って別に否定する理由も無いんだよな、エリクさんも良い人そうでセフィアさんも悪い人じゃなさそうでルッド君が関与してるなら比較的信用はおけると思うし。


「私はっ!」


 でもルッカさんは否定的な気がすると思うけどやっぱそんな感じの反応だ。


「クク……ランティスさん、これはカオス学長の意志ですよ……」


 すっとカオス学長の名を出すルッド君。

 ああ、この違和感の正体はカオス学長の指示だったのか、それなら納得出来る。

 

「ぐっ……分かったわよ!」


 さすがのルッカさんもカオス学長の指示に背く事は出来ないみたいだ。


「あら? 案外物分かりの良いお嬢ちゃんじゃない? なら話が早いわね、ヴァイス・リッターには私が案内するわ」

「ククク……僕はやらなければならない事が多々あります故ここでお暇させて頂きますね……」


 ルッド君がそう言い終わった時、まるでその存在が無かったかの様に何事も無くすっと姿を消したのだった。

 で、俺とルッカさんはセフィアさんにヴァイスリッターへ案内される事になった。

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