第4話
「……で? それから三年たっても気づかなかったんやな。おまえらしいな」
あきれたようにそう言うと、彼は紙袋からセーターを取りだした。
わたしはこっくりとうなずく。
「だって、お守りみたいなもんやったし。それで大事にしまってたら、いつのまにか――」
「ふうん、忘れたんだ?」
チクリと一刺し。
「え、えーと……」
わたしは、ただ笑ってごまかすしかなかった。
わたしたちは神社の長い石段の上にすわり、話をしていた。三年前まではわたしだけの指定席だったけれど、今では彼とわたし、二人の指定席だ。
「こら、大事やったら忘れんやろー。それに今さら返されてもなあ」
「ごめん」
「まあ、いいし。実を言うと、あのとき会ったのは偶然じゃなかったしな。おまえ、わかってなかったみたいだったから心配だったんや」
「えっ?」
「じゃなかったら、次の日もここで待ってるわけないやろ! 二度も告らせやがって。日渡、やっぱりわかってなかったんだな」
末成くんはわたしを見て小さく笑ったあと、セーターを頭からすっぽりと被せてきた。あの日と同じように。そして、ギュッと抱きしめてくれた。
今日も木枯らしが吹いている。だけど、あったかい。
おわり
木枯らし このはな @konohana
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