第14話 タングルド作戦(1)

 縁司、本城が居るリバーサイド墨田セントラルタワーの屋上からスカイツリー方面に目をやるとツリーの左に見えるイーストサイド曳舟二番館の屋上から夜空に向けて一筋の光りが伸びる。

 本部の無線が作戦の進行状況を説明する。


『アルファ、アイソレーション開始。ファイバー電離層突破。軌道衛星のエネルギー集束率一六パーセント』


 さらに左側、マークゼロワン曳舟タワーから光りが伸び反対に位置するアサヒビールタワーも光りが伸びた。


『ベータ続いてガンマ、アイソレーション開始。集束率四八パーセント』


 スカイツリーの奥に見えるオリナス区画、ブリリアタワーとその右に見える第一ホテル両国からも光りが昇る。


『デルタ、イプシロン、開始。集束率八〇パーセント』


 高層建築から中心の東京スカイツリーを囲むように光りの糸が次々と天に昇って行く。

 そして縁司と本城のチームの順番が回って来た。


「さぁ、ジーメンス・アッセンブル! (集え!)」


 本城がコートの内ポケットから収縮されボールペンに偽装したエレメントを出すと縁司は慌てって支給されたエレメントを出す。

 彼女が右手で握ったエレメントを左耳に近付けた後、空気を裂きながら振る。

 エレメントは金属音を響かせ勢いよく伸びきった。

 先端が三つに割れる。


 縁司も本城に習い同じようにエレメントを振るがうまく伸ばす事が出来なかった。

 デタラメにエレメントを振っているうちに先が勢いよく伸び、棒の先が少年の額に当たる。

 二人はエレメントの先を目の前に三脚で垂直に固定したディスコーンアンテナに向けると光りの糸がアンテナの斜めに広がる素子に当たり上部に有る並行に広がった素子が円盤の様に光る。光る円盤が上空に伸びた。


『ゼータ開始。集束率九六パーセント。人工衛星、エネルギー充電中。軌道を補正、カメラが目標を捉えました。集束率一〇〇パーセント。アイソレーションファイバー照射』

 

雲一つ無い夜空に光りの柱が現れスカイツリーに寄生するイルミンスールへ射し込む。

 巨大なリアクターが電磁的分離現象をお越し粒子が火の子のように舞う。


 縁司と本城はエレメントを力いっぱい引く、二人のエレメントは先を湾曲させるがスカイツリーに寄生する可憐な怪物は一向に引きはがされる気配が無い。


「本城さん――――エレメ……が重い…………」


「――――こんなの初めてだわ――――びくともしない……本部!」


 -・-・ --・- -・-・ --・- -・-・ --・-


 通信機からこだまする本城の声を聞き、安曇は次の手を打つ。


「戦車班、ゲイン砲、発射用意」


 オペレーターが安曇の指示を現地で待機する戦車班に伝える。

 戦車班は標的に狙いを定め今か今かと攻撃の合図を待つ。

 鬼塚課長が何かを言おうとしたが安曇が割り込み奪う。


「よし。撃って、撃って、撃ちまくれ」

 

 悪気の無い安曇に決め台詞を横取りされた中年職員は消沈した。


 スカイツリー周辺の住宅地に待機していたデューラス搭載戦車のパラボラアンテナから次々と光線が標的目掛けて放たれイルミンスールの胴から無数のスパーク現象が現れる。


 だが、効果が無い。


「まだリアクターは分離しないのか……」

 

 焦る安曇の隣で何かを閃いた鬼塚課長がコンピュータに近寄り通信機へ語りかける。


「鬼塚です。現場の職員、聞こえますか? 私の合図に合わせて下さい……せーの!」

 

 合図の後イルミンスールがスカイツリーから引きはがされ電波塔の半分の位置で留まる。


「浮いた!?」

 モニターに映る花形ジャマーがスカイツリーから引きはがされる様子を見た本部職員達は次々と驚きの声を上げていた。

 イルミンスールはゆっくりと落ちて行き再びスカイツリーに纏わりつく。

 味を占めた鬼塚課長は再び指示を出そうとすると安曇が付け足す。


「戦車班は目標が浮いた瞬間にゲイン砲を撃つんだ」


 賛同した課長が二度目の合図を出す。


「もう一度、せー……」

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