第6話 電波注意報(2)
「ゼータは本城監視官。それと万丈目臨時監視官補佐」
「僕の名前がある……」
少年は意外な人選にきょとんとしていると班長はタブレットから顔を上げ続ける。
「詳細は各エージェントの携帯端末にアップロードするので各々確認して下さい。直、今回の作戦を“タングルド作戦”とします」
本城が嬉しそうに言う。
「電波塔に引っ掛けたのね。塔の上の―――」
無邪気な反応を見せる彼女に些少博士が顔を綻ばせ返す。
「そうじゃないわ、タングルドは縺れ合うや絡み合うと言う意味が有るから、今回の作戦に合わせた命名よ」
本城が落胆すると鬼塚課長が感心しながら言う。
「今回の作戦は童話の“大きな蕪”のようですなぁ」
それを聞いた本城が縁司を見て茶化す。
「縁司は最後の鼠だね」
「僕、鼠?」縁司は馬鹿にされた気分を害す。そんな少年に博士は優しく諭した。
「君の電波体質は優れた能力が有るから今回の作戦に参加して欲しいわ。安全な場所に配置するから大丈夫」
安曇班長の説明が終わると入れ代りで鬼塚課長が前に出て話す。
「作戦開始時刻は午後六時。それまでに現場の職員は定位置付いて下さい。安曇班長は本部で作戦の動向を確認しつつ指示を出してもらいます――――では解散」
皆が散り散りになると本城はすれ違い様、鬼塚課長に冷徹な目を向け小言を投げる。
「班長は安全な所で見物ですか……随分、エリートに気を使うんですね?」
課長は足を止め周りを気にするように小さく返す。
「特殊電波監視課は元々、外部組織だったからノンキャリアが多いんだよ。あまりエリートが居なくてね。私も扱いに困っている所だ。だが彼はなかなか見どころがある青年だよ」
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オペレーションルームが慌ただしく動く中、ジーメンス作戦指揮に任命された安曇・佳人班長は硝子張りのミーティングルームで長方形のデスクを囲んでいる鬼塚課長、些少博士、女性オペレーターの三人を見つけ訪ねた。
「鬼塚課長、作戦の配置で質問が……」
安曇の声が聞こえていないのか鬼塚課長はデスクに両肘を乗せ合わせた手を口元に寄せて神妙な面持ち考え込む。
そんな彼に女性オペレーターと博士が聞く。
「課長……どうなさいますか?」
「課長、決断を……」
鬼塚は静かに目を閉じる。安曇は責任者たる彼の発言が今後の作戦を左右するに違い無いと思い待つ。だが課長の口から出た言葉は青年官僚の予想と違いおののく。
「カイザーラフレシアなんて名前はどうだろう?」
鬼塚課長の質問に些博士が答える。
「少し子供っぽい気がしますね」
博士の言葉に鬼塚課長は眉間にシワを寄せ再び考えこむ、オペレーターはタブレットでこの場のミーティングの記録を取っているようだ。
安曇は話しに入る余地を見つけ問う。
「……何をしているんですか?」
課長は考え込む体制を崩さず答える。
「見ての通り、命名会議です。名前はいずれ必要になります」
この非常時に名前の事で時間を割いている場合か?
鬼塚課長は呆気らかんと言う。
「ではクリスマスを意味するクリスティ・ナタリスはどうかな? スカイツリーとクリスマスツリーをかけて……」
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