第5話 電波注意報(1)
職員は室内の中央に整列すると目の前に安曇班長、鬼塚課長、些少博士が巨大モニターを背に並ぶ。
些少博士が前に出ると映像が切り替わり側面から見た東京スカイツリーとそれに寄生する花型ジャマーのCGモデルが写し出され博士が解説する。
「花形ジャマーは全長八〇〇メートル。その形状と大きさから墨田区周辺に長い事、生息していたと思われます。まだ活動が抑えられているのでスプリアス放射の影響は少ないですが、いずれ活発かしスプリアス放射はスカイツリーを媒体に東京二十三区へ広がります。厄介なのがスカイツリーに寄生し電波を効率良く吸収したことで防御力を増ましている為、殲滅が困難です」
本城が皮肉を言う「やっぱり、怪獣は電波塔が好きなのね」
モニターが切り替わり湾曲した地平線の中心に簡略化したスカイツリーと周りを囲む高層ビルとその直上に人工衛星のCGアニメが現れた。
些少博士は続ける。
「殲滅の為には、まずスカイツリーから引きはがす必要が有ります。有効な手段としては上空四〇〇キロメートルの軌道衛星から複数のアイソレーションファイバーを衛星に集束させ強力なアイソレをお越し地上からファイバーを引けば“滑車の原理”でリアクターを引き抜く事が出来ます」
CGは周辺の高層ビルから何本ものレーザーが直上の人工衛星に伸び衛星は真下にあるスカイツリーに向けてレーザーを放つアニメに変わった。
モニターは切り替わりスカイツリーを中心に周辺の街を模したCGモデルが現れ中心から赤く大きな円が広がる
「エネルギーを迅速に集束させる為、目標から半径三キロメートル内の建物にアンテナとエージェントを配置。中心の目標を囲むようにフォーメーションを組みます。有効性のある建築物は高さ一〇〇メートルを超える高層ビルで高ければ高い程、アイソレの効果上がります。作戦を展開するにあたり六つの建築物を選抜しました」
映像は再びスカイツリーの側面を写すと今度は選抜された六つの高層ビルのCGモデルが映され、それぞれのデータが表示される。
北は中心から一番遠い首都高速と隅田川沿いに有るリバーサイド墨田セントラルタワー。
北東に位置する筒型の形をしたイーストコア曳舟二館とマークゼロワン曳舟タワー。
南は二つの高層ビルが隣接しオリナス区画に有るブリリアタワー東京。
その先、南西に位置する国技館と江戸東京博物館が近い第一両国ホテル。
西は金色に塗られた雲のオブジェが印象的なアサヒビール本社のタワービル。
「ビルには無断で入れるよう手を回しておきます。尚、スカイツリーが花形ジャマーに電波ジャックされた為、ジーメンスの信号が各施設に送れずウルティマヘテロダイン増幅ゲイン砲と既存の観測システムは機能しません。独立した移動式観測システムで常にデータを収集します。目標から半径二キロメートル内に移動観測用のデューラスМを複数配備。これはゲイン砲を兼ね備えたデューラス搭載戦車です」
それを聞いた縁司は目を輝かせて本城に聞く。
「すごい! 戦車とか有るの?」
「見たらきっと驚くわよ」
本城はウィンクで少年の期待をあおった。
博士は職員から背丈より長い棒を受け取り立てて見せると大きな槍を思わせる。
棒は先端から三分の一の部分に無数の細い棒、エレメント(素子)が上下、区分して広がっていおり下の部分は骨組みだけの閉じた傘に見え上の部分は三六〇度、並行に伸び広がる。
「ファイバーが電離層を突破させる為、アイソレを担当するチームを二人一組に分け使用する機材は電波を真上に飛ばす“打ち上げ型”を兼ねた、この“ディスコーンアンテナ”使います。軍事や航空無線で使うアンテナでエージェントが持つエレメントをこのアンテナに集束させてからエネルギーを衛星へ飛ばします」
些少博士が解説を終えると安曇班長にタブレットを渡し入れ替わった彼が説明をする。
「それではアイソレ担当チームの振り分けをします。チーム・アルファを権藤監視官と黒木監視官。ベータを灰田監視官と朏監視官。ガンマは――――」
縁司は自分が蚊帳の外だと思い他人事のように次々呼ばれる名前を聞く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます