第18話 オービタル・クラウド作戦
「こ、これ以上、走ったら――――死んじゃう――――」
ジャマーは立ち上がり巨体を伸ばすと再び電磁フレア放射を放ち大通りの自動車や信号機を故障させる。二人は流れが止まった内堀通りを斜めに横断、反対側の歩道に移ると、そのまま芝生へ侵入する。
立派な黒松が並ぶ芝生を抜けると砂利道に出て巡回中の警察官が現れ立ち入り禁止区画から出て来た二人を止めようと立ちはだかる。
進行ルートを塞ぐ障害を見て本城は後頭部に手を回しエクステをブーメランのように投げた。
エクステは見事に命中し警察官は吹き飛んで倒れた。
戻って来たエクステを装着すると通信機から課長の声が漏れる。
『本城君!? 今のは公務執行妨害だよ!』
本城は叫ぶ。
「もみ消してぇ~!」
走り続け足が限界に達した縁司は転倒する。
手を引いていた本城が攣られて転倒、二人は二重橋前もしくは正門石橋前の広大な十字路の中心に寝そべった。
疲弊困憊の少年少女が振り向くと透明な巨体揺らし無数の稲妻を放射する赤色の球体が目に入った。
追いかける必要が無くなった巨大ジャマーは途中で歩みを止め顔をゆっくり降ろし獲物に近付く。
こちらを睨む二つの目はマグマのように光り、剣山のように無数に尖る角、牙が生えた鋭い口ばし。
凶暴な怪物の顔を見て縁司は呼吸を忘れる。
側に居る本城はこんな状況でも負けん気でいるのか巨大ジャマーを睨み返す。
二人を品定めしたジャマーは顎を三つに割り花びらのように口を開き鳴く。
もう駄目だ!
縁司は目をつむり顔を両腕で覆う――――――――だが、いつまで経っても異変が起こる気配が無い。
縁司は覆う腕の隙間から目の前を覗くとジャマーは口を開いたまま時間が止まったように動かない。
隣の本城が唇を緩ませ小さく歓喜する。
「食い付いた…………」
巨大ジャマーは凶悪な顔をゆっくり後退させ上半身を上げると夜空に向かい咆哮しヒレのような腕を広げた。
ヒレは大気を漂う電波を吸収し羽のように大きく膨らんだ。
ヒレをゆっくり羽ばたかせると次第にヒレは目で捉えられないほど高速で羽ばたき、その巨体をハチドリのように浮遊させた。
そして巨大ジャマーは頂上に飛行し天に昇って行っく。
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安曇顧問他、取り巻き達はオペレーションルームの動向に固唾を呑んで見守る。
六つに区切られたモニターは次々切り替わり上空を登って行く巨大ジャマーを追いかけていた。
「巨大ジャマー、上昇中! ビーコンを送信する衛星まで四〇〇キロメートルで到達します!」
女性オペレーターの報告を聞き鬼塚課長は上機嫌になった。
「良し良し良し! ウルティマヘテロダイン増幅ゲイン砲。スタンバイ!」
モニターは半分に仕切られジャマーの映像に攻撃用低軌道衛星の画像が割り込む。何台もの人工衛星に備わるパラボラアンテナが上下左右に動き射程の調整を図る。
画面の隅にデジタルの数字が表示され衛星が地球を通り過ぎるまでの時間をカウントする。
残り一〇秒。
だがジャマーの移動距離と衛星の待機時間が合わない。
このままではジャマーが目標へ到達する前に低軌道衛星は東京上空を通り過ぎてしまう。
「二〇〇キロメートル。ジャマー大気圏を出ました! 一六〇キロ。一四〇キロ」
オペレーターはカウントするように報告し始めた。
「一秒間に二〇キロ!? 加速した」
唖然とする安曇に鬼塚課長が説明する。
「障害物になっていた地表の電波影響を受けなくなった為、早くなったのです」
モニターの衛星を影が横切ると別の男性オペレーターが報告した。
「巨大ジャマー、低軌道衛星を通り過ぎ、尚もビーコン送信衛星へ向かいます! 衛星、目標を捕捉!」
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