第17話 オービタル・クラウド作戦
「本城さん、こっちに来る! 次はどうするんですか?」
万丈目・縁司は本城から借りたエレメントを使い巨大ジャマーの誘導を試みていた。
そして試みが成功し思惑通り巨大ジャマーは縁司に向かって来ようとしていた。
「どうするって、逃げるのよ! Gо、Gо、Gо!」
本城に手を引かれ少年は東京駅中央口から皇居方面に向かって走り出すと巨大ジャマーは咆哮しながら追って来た。
その巨体は余りにも大きく身体を前屈みにするだけで本城と縁司に追いついた。
二人の少年少女は消えた街灯が並びタイルのような石造りの行幸通りをひたすら真っ直ぐ走る。
ジャマーは顎を三つに割り口を大きく開き取り込もうとするが二人は寸前で過ぎ去りジャマーは口を閉じ空振りさせる。
縁司が振り向くと巨大ジャマーは鋭い爪が生える両ヒレを地面に着け這うように追いかけて来た。
日比谷通りに差し掛かり横断歩道を越える途中、後方から雷鳴が聞こえ頭上を怪光線が走った。
ジャマーが放つ電磁フレア放射は前方の車道を走行する自動車に命中し車は次々スピン。
そこへ後続車が激突し空中を跳ね上がり本城と縁司目掛けて飛んで来た。
本城は咄嗟に縁司を抱き寄せ頭を掴むと地ベタに伏せる。
車は二人の真上をかすめ彼方で激突する音が聞こえ、間一髪の危機を潜り抜けた本城は直ぐ起き上がり縁司を引き上げた。
「ラッキーラッキーラッキーラッキー!」
「本城さん……鼻血が出た」
地面に顔面を押し付けられた衝撃で縁司の口元は真っ赤に染まる。
「我慢しなさい、男の子!」
縁司が鼻を押え立ち往生していると本城は再び手を引き走り日比谷通り和田倉門を横断。
橋を渡りお堀を過ぎイチョウと石のベンチが両側に並ぶ広い道をひたすら走り皇居外苑へ入った。
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オペレーションルーム。
安曇顧問は机から転がり落ちたボールペンを見て言いようのない不安にかられた。
――――揺れてる――――。
本部職員達も異変に気付き作業の足を止めると室内に不気味な静寂が流れた。
鬼塚課長が状況を読み解く。
「余震です……もう、あまり時間が有りません」
その言葉で青年官僚は落胆する。
首都東京の命運をたった二人の少年少女に託すことになるとは……。
女性オペレーターの報告で彼は我に返る。
「これより東京上空の軌道衛星はジーメンスのコントロールに入ります」
安曇が驚き鬼塚課長に聞く。
「この短時間で宇宙航空機構を説得したのですか?」
「あそこは総務省の所管ですから。交渉の仕方はいろいろ……」
課長は不気味な笑みを浮かべた後、表情を強張らせて言う。
「とは言え、日本全国に情報を送信し続ける衛星を一時でも止める事になります。軌道上の衛星が使えるのは東京上空を通り過ぎる間だけです――――時間はおよそ一〇分」
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皇居外苑。
前方に幾つも並ぶ丸椅子のような石が見えた。
ゴールは目前、だが後方のジャマーが追い着いて来る。
本城は咄嗟に通りを左へ曲がりジャマーをかく乱する。
内堀通りへ入りジョガーの流れに逆らい歩道をひたすら走る。
「ほ、本城さん――――もう、走れない――――」
「何言ってるの? 死にたくなかったら走って! Gо! as fast as you can(走れ! 息の続く限り)」
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