第15話 電磁怪獣現る。

 硝子張りのミーティングルームに集まった安曇を含めたエリート集団は真っ白なテーブルに次々、積まれて行く辞書程の厚さが有る法律書とマニュアルを見て呆気に取られていた。

 鬼塚課長が解説する。

「電波法令、総務省組織令、災害対策基本法、首都災害マニュアル、内閣危機管理マニュアル、そして……」


「こんなに? これを短時間で消化しないとならないのか?」


「ウチもお役所なので憲法と規則の範囲内で仕事をしないとならんのです。なので、我々の方で……」


「いえ、時間が勿体ないので早速取り掛かります」


 安曇が取り巻き達に指示するとスーツの男達は手分けして分厚い本を開いた。


「この場合、災害対策基本法のどの項目に該当するんだ?」


「そもそも非常災害として扱うかどうかだ」


「なら、大規模地震対策特別措置法を調べた方がいいかもな」


「あ、あの……」

 鬼塚課長は真剣に取り組む官僚達を見てうろたえていた。


 若い官僚から弱気な言葉が漏れる。


「この量を短時間じゃ消化しきれない」


 安曇がこの場の士気を上げる。


「みんな、今は僕達にしか出来ないことを全力でやろう!」


 課長は奮闘する皆に注目するよう投げ掛ける。


「あ、あの……皆さん! ここに我々の方で作成したマニュアルが有って、ここに有る内容を一本化したジーメンス特別マニュアルです」


 スーツの男達は鬼塚課長が手に持つ週刊雑誌程の薄いマニュアルを見て、何故もっと早く出さなかったのか? と彼に冷めた目線を向けた。


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 現場の本城・愛はオペレーションルームの安曇顧問と鬼塚課長のやり取りにイラ付く。


『課長。避難誘導の為、ジャマーとジーメンスの存在を一般人に公表し理解してもらう必要が有ります』


『しかし、ジーメンスは公に出来ない事案が多いので公表すれば現職の官僚が全て免職になる事態に……』


 話の進まない状況に本城は嫌気がさし、ほんの少しでも現実から目を逸らそうと夜空を見上げた。

 丸ノ内、一帯が停電し光害が無くなった為、夜空の星々が綺麗に見える。

 輝く星を眺めながら彼女はある事を思い付く。


「衛星…………そうよ、人工衛星よ!」

 

 本城は興奮しながら袖の通信機に話し掛けた。


「課長! 周回する軌道衛星からジャマーが食い付く周波を送信して上空まで誘い出しましょう! 宇宙空間ならスプリアス放射は気にしなくていいわ」


 それを聞いた鬼塚課長は少し間を置き返答した。


『なるほど、衛星を使って“釣り”をする訳か……しかし衛星の電波を地表に送信するには、なるべく広い場所が必要だ』

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