第13話 電磁怪獣現る。
話が長くなると予想して安曇は課長の話しを強引に遮った。
「解りました。御講義はまた別の機会に聞きます」
講義に勢いの付いた鬼塚は突然止められ口をパクパクと空振りさせる。
「その電波を使い一般人に緊急速報を伝えられないのですか?」
「弱りましたな……ジーメンスは極秘なので電波の送信元を悟られる訳にはいかんのです。ウチの電波で送信する時は別の行政機関が送信した事にせねばならんので説得に時間がかかります」
官僚である安曇はその意味を良く理解した。
極秘組織は存在しないと念押しする日本政府が出所の解らない電波を流せば国民の信頼を失う。
平静を装っているが安曇は切迫した状況で焦り早口で話す。
「課長。被害者が増える前に早急に手を打たなければ」
「そうですね……ゲイン砲による攻撃でジャマーの注意を一般人から逸らすことは出来ますが、ゲイン砲からもスプリアス放射が出ます。ジーメンスの防衛兵器が逆に都市機能を低下させるので現状ではアイソレーションファイバーによるジャマーの力を弱めるのが得策です。ただ……」
「ただ?」
「あそこまで巨大ですと電磁波が強すぎてアイソレすら効かないかもしれません」
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停電した丸ノ内で縁司は被害状況を調査する本城に付いて回っていた。本城は袖の通信機を耳に当て本部からの指示を聞いた。
「……攻撃が始まったわ」
高層ビルの中階層や屋上から複数の光る糸が伸びて巨大ジャマーの腹に当たる。
「本城さん。アレは?」
「駆けつけたジーメンスの電波監視官がリアクターを攻撃する炎上作戦を展開してるのよ」
四方からアイソレーションファイバーがリアクター目掛けて伸びるが巨大ジャマーは全く反応しない。
ジャマーは巨体を揺らすとファイバーは千切れ蜘蛛糸のように宙を漂い消滅した。
それを見た本城は悔しそうに言う。
「ジャマーが強すぎる……並みのエージェントじゃ、アイソレを起こせない」
彼女の焦る顔に少年は言い様の無い不安を感じる。
だが不安は現象となって現れ、現場の異様さは増す。
縁司は気のせいかと思った。
巨大ジャマーの周辺に赤い光りが見える。
弱々しく消えたり現れたりしており、建物が停電したおかげで辛うじて見えるくらいのリボン状の光りだ。
所どころ切れ目が有り幾つもの光る柱が伸びているように見える。
だが驚くには早かったようで赤い柱は縁司にだけ見えていたわけでは無かった。
「ねぇ……何か見えない」「何あれ?」「何か光ってる?」
縁司と本城の周辺で同じ物を目撃したであろう声が次々聞こえて来る。
皆、ジャマーが見えている?
電磁波の身体を持つジャマーは普通の人間には見えないはず……でも違う。
周りの人々が言っているのはジャマーでは無く赤い柱のほうだ。
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