第12話 電磁怪獣現る。
集まった光線を飲み込み風船になったジャマーの巨体が一気にしぼむ、口が開き爆発するとオレンジ色の怪光線が赤い稲妻を放ちながら嵐のように道路を駆け抜けた。
閃光に人や車が飲み込まれて行く様は波打つ炎に焼かれているような光景だった。
本城に連れられ間一髪ビルの壁に隠れ怪光線をかわした縁司はその様子を見て驚愕する。
光線が駆け抜けた後は辺り一面が暗闇に包まれた。
閃光に飲まれた一帯は停電し月明かりに辛うじて照らされる。
突然の停電に電波が見えない通行人ですら、ざわめき経っていた。
車は止まり渋滞、修理業者を呼ぼうにも携帯電話が不通になり連絡が付かない。そして最悪の事態は数名の中年層や高齢者が自分の胸を掴み次々と倒れていった。
そばに居る家族であろう婦人が悲鳴を上げた。
ビルの影に隠れ怪光線から逃れた縁司が本城のコートを掴み震える声で聞く。
「何が起きたの?」
「電磁フレア……」
巨大ジャマーはゆっくりと動き始める。
その足音は静電気や関電した時の破裂音に似ていた。
そして狂ったように電磁フレアを放射し都会の明かりを次々と消して行く。
本当の暗闇を知らない文明人がパニックを起こすまで時間は必要なかった。
暗闇に飲まれた街で混乱する人々、その遥か頭上で天高く咆哮する電磁波の怪物。その光景を目の当たりにした少年は絶望する。
「何で……僕のせい?」
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オペレーションルーム。
モニターに映る怪光線の被害に安曇を含めその場に居る誰もが言葉を失う。
ようやく出た言葉は緊迫した鬼塚課長の一言だった。
「被害状況は?」
課長が女性オペレーターに聞くと彼女は我に返り端末を操作し結果を報告する。
「東京駅丸ノ内方面、大手町から有楽町に掛けて全て停電。被害は反対側に飛散して東京駅八重洲口、日本橋、京橋付近にまで拡大。信号機は停止して渋滞、故障した自動車同士の衝突事故が多発。電車も止まり遅延が起きています。電磁波障害で無線基地局は不通、緊急連絡は繋がりません。それと……現場で重傷者が出ています」
鬼塚課長は腕を組み深刻な面持ちで考察し指示を出す。
「電磁フレアによる車や電話、電子回路の破壊。高齢者の心臓を動かすペースメーカーが強力なマイクロ波で故障し他は電磁波過敏症による被害か……すぐにジーメンスの電波監視官を派遣して事態に対応してくれ」
安曇はジーメンス内の情報収集の速さを不思議に思い質問する。
「電波障害の中でも通信は出来るのですか?」
「ジーメンスで使っている電波は特殊です。スーパーヘテロダイン方式の応用で直進する電波に電磁波をかき消すウェーブをスパイラルさせ振動数が短い短波のストロークを伸ばすことが出来るのですが、使用する電波の周波帯は各国の政府機関が電波法にのっとり振り分けています。そして国民へ公にしていない周波帯が存在し、これを地上デジタル放送の周波数帯の一部に偽装いています。その電波はジャマーが嫌う逆位相の電磁波で、我々は公にしていない電波を防衛の為の兵器として運用――――」
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