第9話 電磁怪獣現る。
スーツの男達は本城に駈け寄り抑え込む
「ちょっと、いや、離して!」
本城を捕まえるとスーツの男達は縁司の前に立ちはだかる。
怖い――――。
強張った表情で自分を睨む男達に恐怖する。
縁司の鼓動が早まる。
助けて、本城さん……。
少年は純白の女神に目をやるが彼女は身体の大きい男達に両腕を摘ままれ動けない、本城も縁司に目線を向け二人の目が合った。
本城は何も出来ないと言わんばかりに悔しそうに目を逸らした。
それを見た縁司は自分を助けてくれる者はここに居ない、今は周囲が全て敵なんだと感じる。
……助けて……誰か助けて――――誰か!
ドクン――――――――。
縁司の鼓動が強く脈打った。
まるで胸の中に大きな波が押し寄せて来たようだ。
思わず少年は自分の胸を抑えると心臓の鼓動が次第に早くなる。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドク、ドク、ドク、ドクドクドクドクドクドクドドドドドドドドドドドド――――――――――――。
縁司は胸を押え苦しそうに膝から崩れ落ちた。
それを見たスーツの男達は倒れた少年から少し距離を置いた。
鬼塚課長が叫ぶ。
「いかん! ジャマーが解放される!」
それを聞いた安曇顧問が部下達に捕らえるよう命じた。
縁司は苦しい中でも近づく男達を見た。
来るな……来ないで……。
次第に視界がぼやけ全身が痙攣を起こすと目の前を“あの砂嵐”が覆う。
砂嵐に二つの亀裂が現れマグマのように不気味に光る眼が現れた――――――――そして縁司は立ち上がり夜空に向かって雄叫びを上げた。
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ジーメンスの電波監視官こと本城・愛は目の前の光景を唖然と見つめていた。
その場に居る者は突然の事に混乱する。
安曇顧問を含めスーツの男達は普通の人間である為、電磁波を視界で捉える事は出来ない。
髪が逆立ち叫ぶ少年を前に起きている事態が掴めないでいた。
しかし本城は勿論、同じく電磁波を見れる鬼塚課長も縁司の全身から放出される赤い光りの柱と稲妻をはっきり捉えた。
光りを放出し終わると少年は再び倒れた。
彼女を押さえつける男達が呆気に取られているうちに腕を振り払い縁司に駈け寄った。
「縁司! しっかりして!」
「……本城さん? 僕……どうしたの?」
少年は虚ろな目で本城を探した。
彼女は縁司の両目を指で開き以上が無いか確認した後、安心した。
落ちつく間も無く後ろにいる鬼塚課長が声を荒げる。
「本城君! 見ろ!」
本城は課長が指し示す方を見た――――。
丸ノ内、東京駅方面。
高層ビルの隙間から怪しく蠢くモノが見えた。
ビル群から半透明の影がせり上がり、その巨体を見せつけた。
ネオンに輝き立ち並ぶ高層ビルよりもはるかに遥かに大きい影が現れる。
「嘘…………ジャマーなの?」
ジャマーと思しき巨大な影は高層ビルの倍以上大きく丸ノ内から離れた総通局の屋上でも確認できた。
本城はスマートホンを取り出しカメラを巨大ジャマーに向ける。
アプリを選択し巨大ジャマー全体が画面に納め幾つもの目盛が画面に映る建物を囲み数字で大きさを表す。
今度は巨大ジャマーを目盛が囲み近くの建物と大きさを比較する。数字が出ると本城は結果を読み上げる。
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