第8話 ポニーテールと主査
何? 何? 何なの!?
意味不明な会話が縁司をパニックに落とし恐怖を倍増させた。
安曇顧問は本城に高圧的な態度を見せる。
「これ以上は介入しない方が利口だ」
「そうやって偉い人達はリスクの大きい話しに立ち入るなとか踏み込むなって聖域のような扱いしますね」
本城は明らかに嫌悪する態度を見せた。そんな彼女を顧問は説き伏せる。
「安全は文明により造られた聖域だ。我々の仕事は、この国の安全を神話として継続する事だ」
ガタイの良い小ざっぱりした取り巻きの男が横槍を入れる。
「時間の無駄だ。邪魔するなら局長に報告して処罰してもらうぞ」
男は本城を押しのけ強引に縁司に詰め寄り腕を掴む。
あまりの腕力で手首が痛くなり縁司はわめいた。
少年を連れ部屋の外へ出ようと扉へ向かうスーツの男達を止める為、本城は立ちはだかり道を塞ぐが足止めする策が無いのか無言で立ち尽くすだけだった。
「どけ!」スーツの男は一括すると本城を押し退ける。
部屋を出たスーツの一行は自動ドアへ足を運ぶ。
オペレーションルームでは他の職員はこの騒ぎをただ傍観しているだけだった。縁司が後ろに目をやると本城は無言で見送るだけだった。
どうして? 何で本城さんは助けてくれないの? 縁司はこの前みたく本城が颯爽と現れ危機から救い出してくれる事を期待した。
しかし今の本城はなす術もなく立ち尽くし自分と目を合わそうとすらしない。
縁司は思わず叫ぶ「本城さん!」
その声に彼女は顔を上げ少年と目を合わせると何かを呟く。
「これだから……大人のやる事は嫌いなのよ」
本城は手を頭の後ろへ回す。
それを見た課長は慌てて止めようとした。
「ま、待て! 本城君……」
忠告を無視して掴んだエクステを思いっきり投げた――――――――。
ブーメランのように飛ぶエクステは連れ去ろうとする男達の顔面に弧を描きながら次々命中して行き全員を倒すと本城の下へ戻って来た。
彼女は回転するエクステを掴むと頭の後ろへ装着し縁司に駈け寄り連れ去った。
周囲が唖然とする中、たまたま取り巻きが盾になり攻撃を逃れた安曇顧問が呆気に取られながら言う。
「気は確かか? 一体どこに逃げるつもりだ」
部下の不始末に焦る鬼塚課長はハンカチで額の汗を拭いながら言った。
「彼女のことなので、恐らく一人で憑りついたジャマーを殲滅するつもりだと思います。その為、巻き添えを出さず人目に付かない開けた場所…………庁舎の屋上」
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そびえ立つ巨大アンテナは縦長のブロックが二つ並んだように見え中にミサイルを収納しているのかと思わせる造りだ。
総通局の屋上からは東京が一望でき都会の夜景を堪能出来た。
新宿、池袋の高層ビルを始め左側には丸ノ内周辺のビル。
後方には発光する空飛ぶ円盤のような物が見える。
東京スカイツリーの展望台だ。
都心のど真ん中に大きな暗闇が有りポッカリ開いた穴のように見える。
暗闇の中は小さな光りが点在しており広大な皇居の敷地だと解った。
「いい? すぐ終わらせるわよ……」
本城に連れられ屋上へ来た縁司は強風にも負けず頷いた。
本城はコートの内ポケットからボールペンに偽装したエレメントを取り出して勢いよく振り特殊警棒のように伸ばす。
三つに割れたペン先を向けられると縁司は全身を緊張させ強風に逆らう。
ペンの先が微かに揺れる。
風で揺れているわけではない。
縁司に摂り付いたジャマーに反応を示している。
本城がエレメントを振る。
「そこまでだ!」
突然の呼び掛けに本城は動きを止め背後を振り向くと屋上に駆けつけた安曇顧問、鬼塚課長、四人の取り巻きがいた。
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