第6話 ポニーテールと主査

「ようこそ! ジャマー戦略の要、ジーメンス本部へ!」


 重厚な自動ドアが開き中へ案内されると近未来的な白い空間で正面に大きなモニターが有り六つに区切られ東京街を映していた。

 天井にはリング状の白色ライト。

 部屋の中央に大きな円卓のデスクが有りタッチパネルが埋め込まれスタッフがフリック操作している。

 モニター前にもデスクが並びオペレーターらしき人達がヘッドホンマイクに何か指示を出している。

 スーツ姿の人間がほとんどだが何人か白衣を着た科学者風の人やパーカーに上着を着た人も居る。

 

 四隅は硝子張りの部屋が囲んでいて縦長の会議テーブルを置いた部屋。


 カフェのようにテーブルと椅子が硝子側に設置された部屋が見える。


 本城は縁司をカフェのようなリラクゼーションルームへ案内した。


「ここの珈琲、何年か前は無料だったんだけど事業仕分けで一杯百円になったのよね~」


 そう言いながら本城は集金箱に二百円入れ二つの紙カップに珈琲を注ぐと一つをテーブルの前に座る縁司に振る舞った。


 彼は湯気が立つ入れたての珈琲をすすりながら硝子張りの向こうに見える巨大モニターを見る。

 

 映像はそれぞれ切り替わり。

 道行く通行人の映像、何かの数値を表した折れ線グラフ、東京二十三区や日本列島のCGモデル、地球の軌道を周回する人工衛星や太陽系のシミュレーション映像。


 縁司が不思議そうに見ていると本城が解説する。


「ジャマーは世界のどこに潜んでいるか解らないから常に見張っていなきゃいけないのよ。モニターの前にパネルが付いたデスクが並んでるでしょ? あれはDEURAS(デューラス)」


「でゅーらす? 何か怪獣の名前みたい」


「デューラスは電波監視システムの通称で“DEtect Unlicensed RAdiо Statiоns“という英文を部分的に合わせた略称なの。元々、日本全国の至る所に設置した受信アンテナを使って”無許可の無線局を探知する“のが目的だけど、それをジャマーの発見に応用しているわ」


 縁司は珈琲を飲みながら感心する。


「街や宇宙の映像は各省庁や外局団体の協力を得て貰っているのよ。街の映像なら都市を管理している国土交通省。宇宙の映像なら人工衛星を管理している宇宙航空機構。それぞれの機関から情報を集めて影からジャマーを見張っているのよ。時には特別な権限でジーメンスが都市や衛星をコントロールする事もあるわ」


 縁司は素朴な意見を言う。


「でも見えないから気にしなくても……」


「ジャマーは存在こそ知られないけど、その影響は多大な被害をもたらす。しかも大きければ大きい程、発する怪電波は強力になる。強烈な電磁波は地面を伝って活断層を激しく振動させ場合によっては大地震を起こすの…………今、この国の安全神話が根底から覆ろうとしているダーウィンの進化論や自然法則を無視して未知の生命体がこの世界を脅かしているわ」


 また始まった……。


 本城の話しに熱が入る。


「そこで、私達のように陰ながらジャマーを監視、殲滅する特別な組織。ジーメンスが必要な訳よ!」


「本城さんはジャマーとずっと戦っているんですか?」


「あなたと同じ中学二年でここへ来て、もう四年になるわね」


 と、言うことは僕の四つ歳上だから十八歳…………高校生? 


 珈琲を足しなんでいると中年男性が忙しそうに入って来た。


「本城君!」


「鬼塚課長。おつかれさまです!」


 鬼塚と呼ばれた男性は腹が出た狸のような体格でオールバックに眼鏡を掛けワイシャツの上に赤いカーディガンを着ている。

 ネクタイはクジラの絵柄で何とも可愛らしい。

 名前に鬼と付いているが怖い印象は全く無い。

 むしろ頼りない疲れた顔をしている。

 課長と呼ばれたからここでは一番偉い人なのか? 

 鬼塚は困った顔で本城に言う。

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