第5話 ポニーテールと主査

 結局、放射能騒動はデマと言うことになり自衛隊は嵐のように撤収した。

 この騒動で学校は休校、と言っても午後の授業だったのであまり変わり無いが抜き打ちテストは中止になり生徒達は安心した。

 体育館で各教師の注意を聞いた後、生徒はその場で解散、下校した。


 町野は身体を伸ばしながら室町に話しかける。


「ん~、抜き打ちテストも中止になったし、どっか行かね?」


「秋の陽小学校前の店でよくね? カードゲームやろぜ」


「お! いいじゃん」

 

賛成した町野は物足りなさを感じ辺りを見回して足りないモノを探した。


「ん? 万丈目はどこ行った?」


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 おもちゃのブロックを並べたように建物が点在し、それを囲む高速道路はミニ四駆が走るサーキットのようだ。

 

 千代田区九段下。

 本城同伴により車で沼に浮かぶ城を思わせる広大な皇居周辺の内堀通りを走って行くと玉ネギのシンボルが印象的な日本武道館を通り過ぎ清水門に到着。

 道路に面した銀行や税務署、法務局に挟まれた建物の前で降された。


 バーコードを立方体にしたような建造物の入口には大きなモノリス型の金属版と裏に縦長の電光掲示版、その右奥に球体を螺旋らせんで囲んだオブジェが置いてあった。


 本城は腰に両手を腰に当て得意気に説明する。


「到着! ここは関東総合通信局。略して総通局が置かれている庁舎よ」


 金属版は上から順に“九段第3合同庁舎” “総務省 関東総合通信局”その他、財務省や税関、麻薬取締部、国土交通省などの名称が並ぶ、さらに下は“千代田区役所本庁舎”と有り図書館や労働支援施設等の名称が続いた。


 本城は全面硝子張りの出入り口には足を運ばず建物の裏へと歩いて行った。


「本城さん? どこ行くんですか?」


 建物の裏は高速道路が走っており真下には大きな川が道路に沿うように続いている。


 庁舎裏は何本もの木とスチールの柵で川と仕切られ、ほぼ真ん中に四角に突起した柵が有り白いプラスチックの板には“千代田区本庁舎 防災船着場”と表記されている。


 本城が柵の鍵を開けて扉を開いて川へ降りる階段で堤防沿いに下りて行くので縁司は付いて行った。

 折り返しが有る階段を下り面積の小さい桟橋に付いた。

 真上を走る高速道路が屋根になり川は昼間でも薄暗い、本城がスマートホンを取り出いし操作すると壁がへこみ扉のようにスライドして入口が現れた。


 縁司は驚きながらも本城と一緒に堤防の中へ入る。

 後ろで扉が閉まると中は洞窟のように明かりが少なく暗い、本城は不敵な笑みを浮かべ言った。


「ふふふ、まさか区役所の地下に秘密基地が有るなんて誰も思うまい」


 通路をしばらく歩きエレベーターに到着。

 エレベーターで長い間、地下へ降りて行き止まったところで扉が開き光りの反射が眩しい白い廊下に出て、しばらく歩く。

 そして物々しい両開きの扉前に案内されると入口の右に銀色のプレートが付けられており文字が掘ってあった。


  G\SieMENS 

 OPERATION ROOM


「じー……しー……めんず?」


 縁司の疑問に本城が発音良く答える。


「ズィーメェンスゥ!」


「ずいー……どう言う意味ですか?」


「ジーメンスは電気抵抗の単位で電波と関係無いんだけど、元々は総務省の電気通信研究に関する外局団体の通称で呼んでいて、ジャマーが発見され対策チームに移行してからはガバメントを意味するGが付いて電気関係のジーメンスと行政組織のGメンが合わさって呼ばれるようになったの」


 何だか解らないが縁司は納得する素振りを見せた。

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