第14話 本城監視官よ永遠に、必殺の愛スラッガー!
「ごめん――――本気で無理」
ホンキでムリ…………本気で無理?
縁司の脳内で、その言葉がこだまする。
あまりのショックで開いた口が塞がらず返す言葉を失う。
やっとの思いで言葉を発する。
「ぼ、僕! 小学校の合同運動会で藤沢さんと会ってて、嫌な奴らに絡まれてるところを……」
「うん、知ってる。私もびっくりしたわ! その……あの時」
藤沢は無邪気な笑顔を見せた後、言う。
「お漏らしした生徒と同じ学校だなんて」
彼女、覚えてる――――僕が漏らした事、はっきり覚えてる!?
「あ、あの時。僕は困ってる藤沢さんを助けたんだよ。覚えてない?」
それを聞くと藤沢は少し困った顔をした。
「ごめんね。万丈目君が、お漏らしした生徒だったこと以外覚えてないの……」
そして藤沢はクスクスと肩を震わせ笑い始めると仕舞には思い出したように腹を抱えて笑い始めた。
その光景を縁司は唖然と見ていた。
藤沢さん――――凄い笑ってる……お漏らしで凄い笑ってる!? しかも、お漏らし以外覚えてない!?
年頃の女子中学生は下ネタに過敏に反応していた。
学校のチャイムが鳴り藤沢は係の仕事が有ると言いその場を離れた。後に残された万丈目・縁司をさらに嘲笑う声が聞こえた。
「マ、マジ、ウケる!」
体育館の影から現れたのは縁司の身辺警護を極秘で任されている本城・愛だった。
可笑しさのあまり姿を現したようだ。本城は大笑いした後、推測を話す。
「人間の記憶は印象の強い記憶で次々、上書きされて行くのよ。あの女子生徒の記憶は縁司君に助けて貰った事より君がお漏らしした事の方が印象に強かったのね」
少年は思った。
ジャマーに殺されかけて藤沢さんの顔が浮かんだ。
死に掛けた時、彼女への思いが伝えられないことに後悔した……だから今日! 思いを伝えようと……藤沢さんとは運命だと思ったのに――――彼女も僕の事、気にかけてくれてると思ってのに――――いっそジャマーに取り憑かれて死にたい――――…………。
本城は人差し指を立て苦悶する青少年に語る。
「まぁ、人の想いも電波と同じで相手が受信しないと一方通行なのよね!」
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