第13話 本城監視官よ永遠に、必殺の愛スラッガー!
突然、縁司の視界が光りに包まれジャマーは金縛りあったように動かなくなる。
蛍光灯のスイッチにエクステが当たり電気が点いて室内が照らされる。
リアクターを失ったジャマーは地球上のどんな生物よりも、もろく蛍光灯が発する微量の電磁波にすら耐えられないぐらい弱かった。
スイッチを付けたエクステが跳ね返るように、こちらへ戻ると純白の女神はエクステを捕まえ頭の後ろに装着。
本城の腕にうずくまる少年はその後の光景を一部始終見ていた。
彼女がスマートホンをジャマーにかざすと画面内に映る複数のターゲットマーカーが一点に集中する。
「nоw yоu dоn,t! (ほら、消えた!)」
ジーメンスの電波監視官、本城・愛はそう呟き画面をタッチすると外から入り込むウルティマヘテロダイン増幅ゲイン砲の閃光に包まれジャマーは紙が燃えて行くようにゆっくり焼かれていった――――。
五〇センチ…………。
後、数秒で二人の生死は決まっていたかもしれない。
事の顛末が終わると本城は抱きしめていた縁司を解放した。
縁司は落ちつくと女神のように美しい本城を見てジャマーに襲われる時とは違う胸の高鳴りを感じた。
しかも、ついさっきまで彼女に抱きしめられていたことを思うと顔から火を噴きそうなくらい恥ずかしくなった。
本城は胸を撫で下ろしながら言う。
「危なかった~。リアクターを無くしたジャマーは、ほって置くと身体がバラバラになるのよ。だから身近にある物や人間に憑り付いて身体を維持しようとするの。寄生虫が宿主を見つけられないと死んじゃうのと同じね」
「え? そんな話し聞いてないですよ……」
「あれ? 説明してなかったかしら」
縁司は彼女の言葉に唖然とする。
理科室の外で教師や生徒声が聞こえて来た。
廊下の割れた蛍光灯や硝子を見て騒ぎが大きくなった。
「見つかると面倒ね」
本城は肩を竦めて言うと窓に駈け寄り鍵を外し手摺に足を掛け外へ出ようとする。出る直前、縁司を見て言う。
「縁司君。電波は想い―――電話、メール、ネット……誰かに何かを伝えたい、その想いが電波の技術を発展させたのよ。だから君は自分の想いを伝えなさい!」
それを聞いて縁司は焦る。
「も、もしかして藤沢さんの事、知ってるんですか?」
「言ったでしょ、ずっと前から見張ってたって。早くしないと先越されるわよ! じゃあね」
本城はウィンクして窓の外へ去った。
しかし縁司はある事に気付き血相を変え彼女を呼び止めた。
「本城さん! ここ三階!?」
遅かった。
「きゃあああぁぁぁぁ――――!?」
本城は絶叫し真下へと消えて行った。
縁司は叫び声を追うようにし窓へ駆け寄り身を乗り出した。
「本城さ――――ん!?」
少年の脳裏に純白のコートが鮮血に染まる本城の姿が過った。が、校舎下の地面に本城の姿は跡形も無かった。
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次の日。
電波怪獣の脅威から生き延びた縁司は藤沢・さくらの顔を見れず俯く、だが決意を固め顔を上げ真っ直ぐ藤沢を見つめる。
三年前、彼女との初めての出会いは体育館裏だった。
彼女へ思いを伝える場所も体育館裏。
もう出会えないと思った。
でも中学に入学して再び出会えた。
運命だと感じた。彼女に伝えたい気持ちはいっぱいあった。
君の笑顔が好きだ。君の勉強に集中する姿も好きだ。
学校の係を頑張る君が好きだ。
出会った時から君が好きだ。縁司は内に秘めた思いを解き放つ。
「藤沢さん! …………好きです――――」
クラスの地味な眼鏡少年にはこれが精一杯だった。
縁司の思いを聞いた藤沢は途惑い目を逸らす。
彼女はしばらく考え深く呼吸した後、縁司を見つめ返す。
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