第12話 本城監視官よ永遠に、必殺の愛スラッガー!
本城・愛は酷い目眩で景色が歪む光景をただ眺める事しか出来なかった。
後少し……後少しで痙攣が納まって身体が動かせる。
現に腕は少し動かせるようになった。
でも身体動くころには手遅れかもしれない―――――仕方ない。
同じ電波体質なら扱えるかもしれない。
本城は苦肉の策だが自分の直感に賭け辛うじて動く腕で持っていたアンテナを縁司に向かって力いっぱい投げた。
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縁司は視界に飛び込んで来たアンテナを茫然と眺めた。
その後でジャマーのあの不快な叫び声を聞いて我に返る。
縁司の真上、蛍光灯が強烈な光りを放ち破裂し砕け散った破片がアンテナの導線を塞いだ。
アンテナは縁司まで届かず破片と共に床に落ち、わずかに弾んだ。
少年は本城がアンテナを自分の前に投げ込んだ意図は頭では理解出来なかったが、感覚では何をするべきか解ったように気がした。
縁司は目の前アンテナを掴みジャマーにかざす――――――――何も反応しない。
ジャマーは縁司に向かって襲い来る。
その距離およそ四メートル。
「く、来るな!」
パニックに陥った少年は闇雲にアンテナを振り回した。
すると、アンテナの先が微かに振動し光りの糸が傘の下に有るリアクター目掛けて伸びた。
糸に釣られたれたジャマーは苦しそうにもがき始めリアクターは突如発火し炎上した。
「本城さん! 燃えてる!?」
身体が動くようになった本城が這い着く張りながら答える。
「落ち着いて……溢れた電波が燃えているように見えるだけよ」
縁司がアンテナを無我夢中で振り回すと光りの糸に釣られたジャマーは天井や壁に叩きつけられバウンドし静電気や関電した時の破裂音が聞こえる。
少年が渾身の力を込めアンテナを引っ張るとリアクターはジャマーの身体から引き抜かれ火の玉のように空中で浮遊した。
ルビーの様に輝く綺麗な火の玉に縁司はしばし見とれていると宙に浮く火の玉は花火のように砕け散った――――――――…………。
全力を使い切った縁司が脱力してうな垂れていると心臓部を抜かれた半透明の怪物は奇声を上げ今まで以上に触手を暴れさせた。
少年はアニメやゲームで止めを刺されたモンスターが見せる断末魔の叫びだと思った。
だが
「逃げて!」
本城が叫ぶ、縁司にもその意味がすぐ解った。
リアクターを抜かれても怪物は尚も生き続ける。
それどころか、こちら目掛けて襲いかかって来た。
三メートル。
縁司が再びアンテナを振るが光りの糸は現れない。
少年は思わず身体を丸め身を守ろうとした。
二メートル。
身体のコントロールを取り戻した本城が縁司に覆いかぶさり身を呈して少年を守る。
ジャマーの口が裂けて鋭い牙が向だしになる。
一メートル――――――――。
本城は手を頭の後ろに回してエクステを外すと襲い来るジャマーへ思いっきり投げる。
エクステはブーメランのように回転しながら飛んで行くが電波の身体を持つジャマーをすり抜けてしまい明後日の方向に飛んで行ってしまった。
もう駄目だ!
縁司は本城の腕に守られつつも自分の最後を悟った。
しかし、少年を守る謎の女はこの状況でも自信に溢れていた。
本城が投げたエクステの狙いはジャマーより先に有った。
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