第9話 僕と彼女の最初の難事件

 …………何を言っているのか解らない。これ新しい呪い? 

 それにしても、良く語る人だ。

 しかも喋る度に一々決めポーズをしたがる。


 本城の話は延々続きそうなので縁司は止めに入った。


「あわわ、解りました! 先端技術のオンパレードって感じで凄いです!」


 本城は説明に勢いが付いたにも関わらず突然止められ口をパクパクと空振りさせた。


「砂嵐に飲み込また時、すごく苦しかったでしょ? それは電磁波過敏病によるアレルギー反応なの。あのまま憑りつかれていたら危なかったわね」


 縁司は恐る恐る聞いた。


「あの……もし取り憑かれたら、どうなるんですか?」


 彼女は腕を組み難しい顔をしながら応える。


「ん~そうね~……まず目眩、肩こり、頭痛腹痛、発熱、吐き気、不眠症、呼吸困難、総うつ病……後、心臓麻痺かな、最悪死に至るわね」


 聞いているだけで目眩がした。


「何で僕にだけ見えるんですか?」


「君だけじゃないわ、私も電波が見えるの。例えて言うなら昆虫や爬虫類は紫外線が見えるの、それと同じで人間にも紫外線が見える人が稀に居るわ。その延長線上に電波が見える人間もいて、それが私や君みたいな人なのよ。恐らく昔の人はそういう人物をイタコとか巫女とか言って崇めたのかもね。それに魚類の鮫は電磁波を感じ取る事が出来るのよ」


 本城の説明はすぐには受け止めがたい事ばかりだ。


「ジャマーを倒す為にはヤツのお腹に有る赤い球体を引っこ抜かないと倒せない。ジーメンスでは “リアクター”と呼んでいるの。リアクターはジャマーの心臓でエネルギーの供給源でも有り最大の防御システムなのよ」


「どうやって、り~あく~……ん~を引っこ抜くんですか?」


「ジーメンスの特殊武器。アイソレーションファイバーエレメント(分離繊維素子ぶんりせんいそし)を使って電磁界の破壊を起こして胴とリアクターを分離させるの。これよ」


 本城はさっき壁に叩き付けて半分に折れた棒を見せた。


「ちょっと油断して折れちゃったけど……代わりに何かアンテナみたいのが有ると代用が利くのに……」


「アンテナ?」


「そういえば君、あの変な儀式の時、アンテナを使っていたわね。それが有れば代わりになる」


「それなら理科室に有ると思うけど……」


「OK! アンテナを探して来るからここで待ってて」


 縁司は慌てて本城を止めようとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ! またアイツが来るかもしれないでしょ? もう襲われるのはヤダ!」


「一緒に歩き回るより隠れている方が安全よ」


そう言うと彼女は振り向き立ち上がろうとするので縁司は手を伸ばし捕まえようとした。


「待って!」だが闇雲に掴んだので彼女の平たいポニーテールを引っ張ってしまう。しかし不思議な事に引っ張っている感覚がしない上、何の抵抗も無く縁司は掴んだ髪ごと後ろへ転げてしまった。


「痛たた――――……うわぁ!」


 少年は起き上がり自分の手を見ると髪だけが手にまとわり付いていた。

 思わず少年はまとわり付いた髪の毛を放り投げると床に落ちた髪を目の前の本城が拾い埃を払う。

 彼女はショートヘアーで短い髪を後ろで結っていた。平たいポニーテールは付け毛、エクステンションだった。

 彼女はエクステを頭の後ろに付けると縁司を鬼のような形相で睨む、今は電波怪獣より本城の方が怖い。


「いい? 覚えておきなさい。髪は女にとって命なの、だから今度引っ張ったら電磁波で焼き殺すわ」


 さっき僕を守るのが任務だって言ったのに……。少年が必至で首を縦に振り頷くと本城は笑顔を取り戻した。


「エクステは女の子の秘密道具。だから、この事は内緒よ」

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