第7話 電波少年、危機一髪!

 しかも傘の下、サメの腹に当たる部分は赤い光りを放つ球体が収められており、球体から無数の稲妻が放出していた。

 傘の中から霧が流れ出て辺りを覆う、縁司も謎の女も霧に飲み込まれ縁司は髪が静電気を感じ取りライオンのたてがみのように逆立つ。

 サメの触手まっすぐ女目掛けて飛んで来る。

 

 女の腕に触手が絡みつくと彼女は触手に抵抗する。そして腕を左右に振られ棒を壁に叩き付けると棒は半分に折れてしまった。


「ヤバい……」謎の女は後ずさる。


 モンスターは赤外線のように怪しく光る眼をこちらに向けてゆっくりと近づいて来る。


 女は袖を口元に寄せて早口で喋る。

「エレメント破損。アイソレが困難になりました。マル対を連れ、一時退避します」

 

 謎の女はコートからスマートホンを取り出しモンスターへカメラレンズをかざし指で操作する。


 すると――――――――閃光がモンスターを包み光りの屑が飛び散った。


 女がスマートホンを操作する度に窓の外から螺旋を巻いた光線が一直線に入り込み、閃光がモンスターを襲う。

 それは真っ直ぐ進む光りの竜巻の様に見える。

 だがモンスターは最初の一撃にひるんだだけで、その後の攻撃は物ともしない。


「やっぱり駄目か……」


 謎の女は光線が通用しないと解るとモンスターに背を向けて縁司の腕を掴み走った。

 訳も解らず引き摺られて走らされると背後から鼓膜を突き刺すような悲鳴が聞こえた。

 振りむくとモンスターが口を開き雄叫びを上げていた。

 そしてこちら目掛けて追いかけて来る。


 が、廊下の角を曲がると追いかけるモンスターは窓ガラスをすり抜け外に飛び出してしまった。


 しかし、すぐに校舎の中へ戻り宙を漂うと触手で壁を蹴って勢いを付けて追って来る。


 混乱する縁司は謎の女にただ引っ張り回される。

 すると、女は急に制動を掛けて止まろうとした。

 停止しきれず足が床を滑る。

 縁司は反動で彼女の前に出るが腕を引っ張られ床に倒れる。


 彼女は後ろを振り向き持っているスマートホンを再びかざす――――光線が窓の外から入り込みモンスターに命中する。

 縁司は光線が飛んで来る方向を見た。

 視界がぼやけて見づらいが校舎の隣に有るマンションから幾つもの光線が放たれている。


 モンスターは平然としているが光線が目に当たると絶叫し悶える。

 そのスキに女は真横のドアを開けて縁司を引きづり室内へ入った。


 ドアを閉めると縁司を床に押し付けてしゃがむ、すると室内の壁越しにジリジリと熱が伝わって来た。

 モンスターが部屋を横切っているのが解る。

 身体の熱が引くとモンスターが過ぎ去ったことを感じた。

縁司は辺りを見回す。


 薄暗い部屋は壁に架けられた油絵や偉人の石膏像が置いてある。

 どうやら美術室の様だ。謎の女は溜息を付き安堵し、安全が確保出来ると笑顔で少年に語りかけた。


「危なかったわねぇ~。万丈目・縁司君」


 縁司は驚き聞く。

「何で僕を知っているの?」


「当然よ、ずっと前から見張っていたんだから。私の任務はあなたを守る事」


「見張っていた? 守る? もしかして白い幽霊の正体は……」


 彼女は笑いながら言う。


「白い幽霊? 失礼ね~。私、まだ人間やってますけど?」

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